2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2017年2月18日

新聞はこうして締め上げられた

 2014年に4度目の駐在でベネズエラに戻ってくると、新聞も直接の政府批判は控えるようになっていた。新聞はどうなってしまったのだろうか?

 「ご存じのように、ラジオ、テレビ、新聞もすべて宣伝で収入を得ている。新聞は発行部数よりもね。じゃあ、政府はどうやったか? 経営陣と交渉したんだよ。宣伝を切らない、とね。私企業のほとんどは接収されて国営企業だから。するとどうなったか? 新聞は独立しているとしても、恐怖がある。たとえば、政府を批判するにも直接しない、メタファーさ。そして、マスコミとしてもっとも悲しいことだが、自己検閲を始めた。釣り合いをとるなどといっているが、この紙面には反政府の記事を、別の紙面には政府万歳の記事を載せる」(アルベルト)

 「もともと記者は頑固で言うことをきかない。だから、まずは広告が来ないようにする、次は政府の金で株式を買って実際に経営権を奪う。100年の歴史を持つ、ウニベルサル、 発行部数最高だったウルティマ・ノティシアは政府が買った。マラカイボにあるパノラーマは買ったのではなく、広告ほかで便宜を図った。東部では、エル・ティエンポは反政府で独立しているけど、ほかの新聞はすべて政府系になってしまっている。それでもコントロールできないときは紙の配給をとめる。紙は国内で生産できないので、アメリカやカナダから輸入する。そのための紙輸入配給会社を政府がつくってコントロールしている。ラジオも電波網を持つCANTVに支配され、95%は政府の軍門に下っている」(サンチャゴ)

自由なメディアが消えた世界

 ベネズエラの憲法は、言論の自由を保障し、検閲を禁止している。国会議員や大統領は選挙で選ばれている。民主主義の形をとっているのに、言論の自由は風前の灯で、真実が伝わるメディアは、主にツイッターやフェイスブックになってしまった。すると、どうなったか。

 「政府が何をやっているのかわからない。大統領が外遊して海外の首脳にあっても、その内容が伝わらない」(アルベルト)

 「最大の問題は、コカイン政権の腐敗についてまったく報道されなくなったことだよ」(サンチャゴ)

 こうして、権力に対する監視が行われない社会の中で腐敗も犯罪も燒結を極めて行ったのである。

(今、もう一人のファシストであるトランプ大統領は、「ニューヨーク・タイムズ紙は誰かが買収し、正しく経営するか、廃刊にすべきだ」とつぶやいている)。

【筆者講演のお知らせ】
演目 報道されないラテンアメリカと世界
日時/場所 3月10日(金) 19時10分~(18時30分からのIoT関連の専門家の講演終了後)
東京ウイメンズプラザ「第1会議室 B」 (渋谷区神宮前5-53-67)
参加費 女性・学生 無料 初参加の男性1000円
終了後 親睦会あり
主催・問合せ:ビジネス推進機構 野口孝一(携帯:090‐3816‐6245)

  
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