トランプ氏は国務長官人事で、元共和党大統領候補のロムニー氏と2度会談したが、長官候補の1人として検討する姿勢を見せたのは、長官に指名する気があったからではなく、選挙期間中に「大統領の資質はない」などと批判したロムニー氏を玩び、見せしめにするつもりではなかったのか、との見方が強い。
トランプ氏は19日、「ロシア制裁見直し密約」の疑惑で辞任したフリン補佐官(国家安全保障問題担当)の後任候補4人と面談する予定だが、最有力候補だったハワード将軍が補佐官就任の申し出を辞退したのは、トランプ氏への絶対的な忠誠を要求され、バノン氏ら側近が国家安全保障問題に干渉する恐れのあることを嫌ったためとも言われている。
“独裁者の始まり”
トランプ氏は表面上、政権のこうした体制遅れを気にしている様子はない。それどころか16日の初めての単独の記者会見では、政権が混乱しているとの批判に対して「機械のようにうまく回っている」と反論。報道機関を“超偽ニュース”と非難、メディア叩きを徹底する構えを見せた。
トランプ氏の現在の攻撃の対象はメディアと、メディアに情報をリークしている情報機関だ。とりわけニューヨーク・タイムズ紙が最近、選挙期間中にトランプ陣営の幹部が繰り返しロシア情報機関当局者と接触していた事実を素っ破ぬいたことに激怒。リーク狩りを司法省に指示した。
一部では、トランプ陣営がトランプ氏を勝たせるため、対立候補だった民主党のクリントン氏の不利になるような情報をロシア情報機関に流させるため、ロシア側と共謀していたのではないかという「ロシア・ゲート」疑惑も出ており、これがトランプ氏立腹の原因になっているようだ。
こうしたトランプ氏のメディア非難に対し、共和党の重鎮で、上院軍事委員長のマケイン議員は「言論の自由を封じ込めることは独裁者が初めにやることだ。大統領は独裁者になろうとしている」と強く諫めた。しかしトランプ氏がこうした批判に耳を貸すとは思われず、政権の機能不全とメディアとの対立はさらに拡大しそうな雲行きだ。
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