2024年11月5日(火)

WEDGE REPORT

2017年2月14日

 トランプ政権が混乱の極みにあるとの批判が野党民主党やメディアばかりではなく、大統領の支持者らからも高まってきた。とりわけイスラム7カ国からの入国禁止の大統領令をめぐる対応の稚拙さに首席補佐官の解任要求も飛び出す始末。しかし当のトランプ氏は出演していたテレビのリアリティ番組のように「カオスを楽しんでいる」(米紙)風情すらある。

(iStock)
 

稚拙な政権運営は「中学生大統領」

 この大統領令をめぐる政権内の混乱と無統制ぶりはひどかった。ホワイトハウスや司法省、国土安全保障省の言うことがばらばらで、空港の入国審査の対応も場所によって大きく違い、長時間拘束されたり、追い返された人が続出。国内ばかりか、世界中に混乱が広がった。

 長官の承認が遅れていた司法省では、大統領令に従わないと明言した長官代行が解任され、国務省では大統領令に反対する署名が1000人を超えた。次官や要の次官補クラスなど高官がほとんど辞任、ティラーソン新国務長官への引き継ぎも危ぶまれる事態に陥った。

 こうした国内の混乱に加え、欧州諸国や隣国カナダなどから、「宗教差別ではないか」との批判が相次ぎ、英国ではトランプ氏の訪問反対の署名が160万人を超えた。こうした中、ワシントン州連邦地裁が大統領令の効力停止の仮処分を決定、政権側はカリフォルニア州の連邦控訴裁に控訴したが、ここでも停止の維持を決定。トランプ氏の大きな後退となった。

 日米首脳会談の記者会見や首脳の移動中の米記者の質問は首脳会談の中身ではなく、大統領令の敗北と今後、入国禁止問題をどうするかに質問が集中。トランプ氏は「あらゆる必要な措置を取り、最終的には勝つ」と大見得を切ったものの、想定外の展開に戸惑いは隠せない。

 ワシントン・ポスト紙は「トランプ特急は脱線の瀬戸際」などと混乱ぶりを伝え、ニューヨーク・タイムズはトランプ氏の稚拙な政権運営を「中学生大統領」と冷笑を浴びせた。 

 混乱の原因は明白だ。歴代政権では司令塔役が首席補佐官で、指揮命令系統がはっきりしているのに、トランプ政権では首席補佐官と同格の地位を付与された人間が他に2人もいる。首席戦略官兼上級顧問のバノン氏と娘婿の上級顧問クシュナー氏だ。権限がこの3人に分散している上、大統領の信頼との親密な関係をバックに顧問のコンウエー氏がメディアに勝手に発信しているからだ。つまりはホワイトハウスの指揮系統がばらばらだというわけだ。

 特に入国禁止の大統領令はバノン氏と大統領のお気に入りの若手顧問で、スピーチライターのミラー氏が事前に情報が漏洩することを恐れ、マティス国防長官らにも知らせず大統領令を作成し、大統領に署名させた。トランプ氏は内容を十分に把握しないまま、署名したことを認めているが、大統領令そのものが拙速で、不十分だったため、連邦地裁での敗北となった。


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