2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2017年2月14日

生き残り賭けて争わせる

 しかしトランプ氏はこうした部下同士の競争やホワイトハウスの無秩序をむしろ楽しんでいる様子さえある。ホワイトハウスでの部下たちの権力闘争を放置、自らホストを務めたNBCの人気リアリティ番組「アプレンティス(見習い)」に擬えているのではないかというのだ。

 この番組は参加者がトランプ氏の会社への本採用を目指し、与えられた課題を生き残りを賭けて競い合っていくという筋立て。課題を達成できなかった人を「お前はクビだ!」と叫ぶトランプ氏が人気を博した。「同氏は“カオスこそ望ましい結果を生む”と信じている」(米紙)と見られている。

 ホワイトハウスでの生き残りを賭けた戦いは現時点で「お前はクビだ」と言われる2人の落伍者が出そうな様相だ。その1番手は国家安全保障問題担当のフリン補佐官だ。フリン氏は国家安全保障会議(NSC)の事務局長としての統率力に欠けている上、政権発足前にロシアの駐米大使と対ロ制裁の解除について話合ったという疑惑で調査中の身の上だ。

 ペンス副大統領にもロシア大使との会談の内容に関して虚偽報告をして、ペンス氏をミスリードした疑いが掛けられている。米メディアはホワイトハウス高官らに「フリン氏はなお大統領の信頼を受けているのか」との厳しい質問を繰り返しており、同氏は政権3週間目にして風前の灯火という見方が強い。

 2番手はプリーバス首席補佐官だ。トランプ氏の親しい友人で「ニューズマックス・メディア」会長のクリストファー・ルディ氏が11日に大統領と会談し、プリーバス氏を解任するよう強く申し入れたと伝えられている。会長はプリーバス氏が連邦政府の仕事を分かっておらず、コミュニケーション能力もない、と首切りを求めたという。
 
 政権発足から1カ月もたたないうちに側近を更迭するのは大きな痛手だ。しかし「大統領職がトランプを変えるのではなく、トランプが大統領職を変質させる」(ワシントン・ポスト紙)というほどの予測不能で特異な大統領だけに、電光石火の早業で「お前はクビだ!」の台詞が出るかもしれない。

  
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