20日の就任式が目前に迫る中、トランプ次期大統領は就任後の外交の最優先課題として、プーチン大統領との早期の米ロ首脳会談を計画しているとの見方が急速に高まってきた。核軍縮や対「イスラム国」(IS)での軍事協調などで合意し、世界にその成果を誇示したい意向と見られている。
レーガンに倣いレイキャビク浮上
トランプ氏は11日、大統領に当選後、初の記者会見を開き、同氏がモスクワの高級ホテルでわいせつな行為を行ったことを含む文書をめぐってCNNやニュースサイト「バズフィード」を「お前らは偽ニュースだ」などと口を極めて批判し、怒りをあらわにした。
一方で、米大統領選にロシアがサイバー攻撃で介入したという問題については「ロシアがやったと思う」と関与を確認しながらも、プーチン氏が指示したとの点について強い批判を押さえ、「彼が私のことを好きだというのであれば、弱みではなく強みだと思う」と秋波を送った。
トランプ氏に指名された重要閣僚が上院の承認公聴会でロシアについて「揺るぎない脅威であり、懸念が増大している」(マティス次期国防長官)「危機を引き起こしている」(ティラーソン次期国務長官)などと警戒感を示したのとは対照的だ。
オバマ政権下ではロシアとの関係がどん底まで悪化したが、オバマ氏の政策を軒並みひっくり返そうとしているトランプ氏がロシアとの関係改善を速やかに成し遂げたいと考えているのは明らか。国家安全保障担当の補佐官に任命したフリン将軍が昨年暮れ、2回に渡ってキスリャク駐米ロシア大使と電話会談したのも、大統領就任後早々に首脳会談を開催するための地ならしとの見方が有力だ。
トランプ氏自身、米経済紙との最近のインタビューでプーチン氏との米ロ首脳会談について意欲を示しているが、英有力紙サンデー・タイムズは15日、米政権移行チーム当局者の話として、トランプ政権発足後、数週間以内にアイスランドの首都レイキャビクで核兵器削減を協議するための米ロ首脳会談が計画されていると報じた。
同紙は政権移行チームの当局者が英当局者に対し、トランプ氏の大統領としての最初の外国訪問がアイスランドになるとの見通しを明らかにしたという。トランプ氏の側近はこの報道を否定しているものの、一部のトランプウォッチャーはレイキャビクという場所に注目、就任早々に成果を挙げたことを示すためにプーチン氏との会談があり得ると指摘している。
レイキャビクは1986年10月、当時のレーガン大統領とソ連共産党のゴルバチョフ書記長による首脳会談の舞台になったことで知られる。両者はいったんは核兵器の削減で合意したものの、米国の推進する宇宙におけるSDI(戦略防衛構想)をめぐって土壇場で決裂、「潜在的合意」と呼ばれた。
現場で取材していた筆者も、みぞれ降る中、会談場所に選ばれた真っ白なホフディ・ハウスに入った両首脳の姿を今でも鮮明に覚えている。レーガン大統領とともにハウスに入ったシュルツ国務長官が風呂のフタを机にして合意の文言を書いたことが今でも語りぐさになっている。
レーガン氏は今なお歴代大統領の中で国民の人気の高い大統領で、トランプ氏はレーガン大統領の「力による平和」を信奉し、レーガノミクスならぬトランポノミクスを進めようとしている。冷戦崩壊に導いたレーガン氏に倣ってレイキャビクで首脳会談を開催しても不思議ではあるまい。