2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2017年2月20日

 トランプ米政権の各省の政治任用の高官ポストが政権発足1カ月たってもほとんど埋まっていない。過去にトランプ氏への批判歴のある人材の起用を断固認めない方針だからだ。当の大統領は政府の態勢が整わないこともどこ吹く風で、「メディアは国民の敵」と非難し、メディアとの”戦争”を激化させている。

19日の記者会見でのトランプ氏(GettyImages)

副長官ポストはわずか3人

 米国では政権の交代に伴って、ホワイトハウスや国務省など各諸官庁の政治任用の高官らも替わる。その数は4000人を超える。しかし現政権では、そのポストがほとんど埋まっていない。元々、上院での閣僚の承認も野党民主党の反対で大幅に遅れ、これまでに15閣僚のうち承認されたのは9人だけだ。

 15の省庁でナンバー2の副長官が決まったのは3人にすぎない。この異常事態が特に深刻なのは外交を取り仕切る国務省だ。政権発足直前、副長官や次官、実務の責任者である局長ポストの次官補クラスが辞任するか、解任されるかでほとんどいなくなった。ティラーソン国務長官が承認されたのは2月2日だが、長官に引き継ぎすべき人間たちがいなくなったのである。

 現在は1人高官として残ったナンバー3のシャノン国務次官が長官を補佐しているが、このほどドイツで行われたG20外相会議に出席の長官に同行した国務省幹部8人のうち、5人は臨時の肩書きで随行した。ティラーソン長官は報道官も任命できておらず、人材集めに苦労していることもあって、同省のポストの削減を検討中といわれる。

 ティラーソン氏は最近、副長官候補として、レーガン、ブッシュ両政権に仕え熟練の外交専門家であるエリオット・エイブラムズ氏の就任をホワイトハウスに具申したが、拒否されてしまった。大統領選挙期間中にトランプ氏に批判的な発言をしたことがあったというのが拒否の理由だ。最近、国務省の幹部外交官6人が解雇されたのも同じような理屈だった、という。

 国務省だけではない。先週には住宅都市開発省の高官が突然解任されたが、ホワイトハウスが過去にこの高官がトランプ氏に批判的な言動をしていたことを知ったからだった。国家安全保障会議の高官も最近、政権に不満を漏らしたことが発覚してやはり解任されている。

 このように政治任用ポストが決まらない理由はホワイトハウスが過去にトランプ批判をした人間を認めず、起用には絶対的な忠誠を要求しているからに他ならない。トランプ氏自身が自分を軽んじた人間を許せず、また共に選挙を戦ってきたバノン首席戦略官兼上級顧問ら側近が厳しくチェックしている。


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