2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月10日

 この社説は、朴槿恵退陣キャンドル集会に反米グループが入り、反THAAD運動を展開していることを問題視するものです。朝鮮日報も2月4日付けで同趣旨の社説を掲載しています。

 峨山研究所調査が示すように、韓国では多くの者がTHAAD配備を支持しているということでしょう。しかし、これまでの韓国の内政を見ると、野党、組合等を含む左派(大まかに国民の3分の1が左、3分の1が中間、3分の1が右と考えられる)は大きな動員力を持っており、野党主導の大衆運動には、反政府、反米、反THAAD感情等が重なり合っています。社説の趣旨は分かりますが、反朴槿恵と反米・反THAADは実際上区別不可能です。

標的にされたロッテ

 マティス米国防長官が訪韓、2月3日の米韓国防相会談で対北対応、核の拡大抑止、THAAD配備などにつき必要な協議が行われたことは良いことでした。双方はTHAADを予定通り本年末までに配備することを確認しました。これは2月7日の米韓外相電話会談でも確認されました。THAAD配備に関する米韓合意を予定通り実施することは、この地域の安全にとって重要です。
THAAD配備に反対する中国の対韓国圧力は依然として続いています。THAADの最終配備地となった星州のゴルフ場の所有者だったロッテが標的になっているようです。ロッテが瀋陽に建設中のロッテワールドが中国官憲の消防点検を理由に12月から工事中断に追い込まれているといいます。

 目下韓国の政治は、大衆集会、弾劾裁判、特別検察官、次の大統領選挙を巡って混迷を深めています。大衆集会については、野党の集会に加えて、保守の「太極旗集会」も増加しており、「政局は、『ろうそく』と『太極旗』がどこで火花が飛ぶかわからない、一触即発の戦雲が漂っている」とも言われています。

 弾劾裁判については、憲法裁判所(所長と裁判官の計9人で構成)が6月6日までに判断を下します。9人の裁判官のうち6人以上の賛成で弾劾が成立しますが、朴漢徹所長が1月末に任期満了で退任、3月13日には李貞美裁判官が任期満了で退任します。そのため、野党は3月中旬までに弾劾の結論を出すよう主張しています。

 韓国大統領選挙については、最大野党「共に民主党」の文在寅・前代表の「一強」状態(同氏が約30%、他は10数%以下)が続いています。有力な保守候補であった潘基文前国連事務総長は2月1日突如撤退しました。文在寅は、盧武鉉政権で秘書室長を務めた左派の政治家で、対日関係についても強硬姿勢です。一旦不許可とされた在釜山日本総領事館前の慰安婦像設置についても、同氏がおかしいと批判して世論が一変、市民の反発を恐れた当局がこれを許可することになってしまった経緯があります。

  
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