ウォール・ストリート・ジャーナル紙の1月25日付社説が、マケイン上院議員による米国によるアジアにおける防衛強化策「アジア太平洋安定イニシアチブ」を紹介し、TPPの代わりに米国とアジアは防衛強化のための追加資金を投じるべきである、と論じています。要旨、次の通り。
米のアジアにおける友邦は、トランプのTPP離脱正式通告を受け苛立っている。日豪越その他各国は、TPPが米との関係強化に資すると期待していた。これらの国々を安心させるには長年にわたる努力が必要となろうが、太平洋地域の安全保障強化のための75億ドルの資金という、ジョン・マケイン上院議員の提案は、よい第一歩になるだろう。
この「アジア太平洋安定イニシアチブ」には、今後5年間にわたり資金が投じられ、中国と北朝鮮からの脅威が増大しているアジア全域で、米国は、軍需品の供給を増やし、軍事施設を拡大し、同盟国との協力を強化し得る。日本から豪州北部にかけて新たな滑走路などを建設すれば、米国の南シナ海周辺へのプレゼンスを強化し、米軍の地域におけるローテーションを増やし、友邦との軍事演習を増やすことができる。
ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は昨年、「軍需品類の決定的な不足」を警告した。国防総省は昨年、すぐに取り掛かれるプロジェクトへの追加拠出を求めたが、オバマ政権は中国の反発を恐れ却下したという。
トランプは中国の攻撃性にもっと積極的に反応するだろう。ティラーソン国務長官は指名公聴会で、南シナ海の人工島への中国のアクセスを拒否すると述べたが、アジア政策のトップが空席の間は、トランプ政権はマケインの提案のような具体的なイニシアチブを通じて意図を示した方がよい。
マケインは、オバマ前政権による現行の国防予算を5年間で総額4300億ドル増やすよう提案している。トランプが公約通り軍の近代化と増強を行うには、それだけの規模は必要であろう。
韓国はスキャンダルで麻痺し、日本の防衛費増額は国民感情の限界に達しようとしている。豪州は、2026年までに防衛費を81%増やすとしている。しかし、米国の友邦の当局者は、地域の安全保障へのコミットメントを強化する追加的資金を追求すべきである。
TPPが駄目になれば、米国と友邦は戦略的な穴から抜け出すのに困難が生じよう。中国と北朝鮮は、圧力をかけてくるであろう。マケインが提案した資金、各国の同様の努力が益々重要となる所以である。
出典:‘Trump’s Asia Reassurance Project’(Wall Street Journal, January 25, 2016)
http://www.wsj.com/articles/trumps-asia-reassurance-project-1485390869