2024年11月24日(日)

WEDGE REPORT

2017年3月30日

写真を拡大 ロヒンギャ問題を抱えるヤカイン州

  ミャンマーで暮らすイスラム教徒の多くは、植民地時代に英領インド各地から流入した移民の子孫や、移民とミャンマー土着民族との間に生まれた人々だ。その半数近くは、バングラデシュと国境を接するヤカイン州で暮らす。ミャンマー政府はロヒンギャを民族とは認めておらず、ロヒンギャはあくまで「自称」だ。
 仏教徒とイスラム教徒の宗教対立は12年に深刻化した。ヤカイン州の町でヤカイン族の女性がロヒンギャの男3人から暴行を受け、殺害されると、大規模な衝突に発展。反ムスリムの動きがフェイスブックなどを通じて広がり、ヤカイン州以外にも飛び火した。

 アウンサンスーチーは当初、ロヒンギャに対する暴力行為の即時停止などを訴えたが、多数派の仏教徒から逆に批判を浴びると、その後は口をつぐんだ。新政権発足後も深入りを避けている。

深まる国軍との対立人材不足のNLD

 15年11月に行われた総選挙で、アウンサンスーチー率いるNLDは、改選対象の491議席のうち約8割にあたる390議席を獲得、軍事政権の流れをくむ連邦団結発展党(USDP)に圧勝した。建国の英雄アウンサン将軍を父に持つアウンサンスーチーのカリスマ的な人気。勝因はそれに尽きる。

 アウンサンスーチーは総選挙から1カ月もたたないうちに、首都ネーピードーで大統領(当時)のテインセイン、国軍トップの司令官ミンアウンフラインと相次いで会談。さらには軍事政権時代の独裁者タンシュエとも会い、和解への期待が高まった。

 しかし、国軍はアウンサンスーチーへの警戒を緩めてはいなかった。新政権発足直前に司令官のミンアウンフラインと、副司令官ソーウィンの任期をそれぞれ5年間延長。副大統領の一人に、タンシュエに近い強硬派の元軍人ミンスエを送り込んだ。

 国軍は新政権の出方を様子見していたが、ここにきて、テインセイン前政権の施策をことごとく批判し、性急に改革を進めようとする政権との対立を深めている。

 外交関係者によると、アウンサンスーチーは最近、国軍幹部や国会議員らを集め、少数民族武装勢力との停戦合意に向けた和平交渉プロセスに関する勉強会を開催した。その席で、政権のアドバイザーを務める元英政府首相補佐官ジョナサン・パウエルが「講義」をしたところ、国軍幹部らは「和平交渉プロセスは国内問題だ。なぜ、外国人に指示されなければいけないのだ」と怒り、席を立ったという。ミンアウンフラインは周囲に「残念ながら、わが国の最高意思決定者は物事を決定する能力もなければ、現状も分かっていない」と漏らし、ポスト・アウンサンスーチーに意欲を示し始めた。


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