ネット炎上のかけらを拾いに

2017年4月4日

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なぜ「作家」にこだわるのか

 ウェッジの読者にどれくらい馴染みがあるかわからないが、はあちゅう氏は大学生のころからブロガーとして活躍し、卒業後は電通に入社。トレンダーズに転職した後、フリーランスになっている。これまでに出版した著書は10冊以上。有料制のオンラインサロンを複数起ち上げるなど、活躍は目立つ。

 一方で、アンチも非常に多く、数々の発言で炎上を繰り返している。ひとつひとつを見ていけば正直なところ大した失言ではないのだが、「なんか鼻につくやつ」というイメージが先行しているらしく毎度ネット上の一部をザワつかせている。今回の炎上でも、はてなブックマークで「いつも炎上させてるんだからライターだろ」という鋭いツッコミが入っていた。

 確かに世の中を眺めると「作家」を名乗る人は小説家が多い。とはいえ、はあちゅう氏も今年2月、文芸誌『群像』に短編小説を発表したそうなので、「作家」と言えなくもないのではないか。とはいえ、「作家」の肩書について根拠を提示するために、わざわざ加藤氏の名前を出したり、林真理子氏に「はあちゅうさんが作家という肩書をつかって悪いことはないよ」と言われた話を引用したりするのは、何とも言えずだせえなあと感じた。

 はあちゅう氏はブロガーとして活躍しながら、何とかして「作家枠」「文化人枠」に入りたいと画策されている方に見えるが、筆者が常々不思議なのは、彼女が一般的な「読書好き」「文学好き」な層からはことごとく嫌われるような振る舞いをすることだ。ブログの文章も同様。今回のように「作家」を名乗ったときに批判を浴びないためには、この層に「なんかチャラい……」と思わせないための策が必要なのではないかと思うのだが。

 そして、彼女のファン層は「読書好き」「文学好き」ではなく、「恋愛と仕事を両立したいし、もっとキラキラした毎日を送るために自分を磨きたい」と純粋に願う女性たちと、そんな女性を口説きたい一部のIT企業に勤める男性たちなのだろうし、彼女もそれをわかってオンラインサロンを起ち上げているのだろうから、もうわざわざ「作家」という古臭い肩書きにこだわらなくても良いのではないか。

 学生の頃からブログを使って人脈作りをし、炎上することで知名度を上げ続け、ついには念願の文芸誌で小説を発表。これまでの作家とは違う努力でのし上がっている彼女は既存の肩書きに拘泥せず、「ハイパーメディアライター」なり「空前絶後のキラキラブロガー」なり、自分で新しい肩書きを名乗ればいいのではないか。ちなみに例に挙げた肩書きがダサいのは、はあちゅう氏を揶揄する意図ではなく、ひとえに筆者の発想がおっさんじみているからである。

 この炎上には、吉田豪氏のほか、エッセイストの能町みね子氏、作詞家の及川眠子氏、「ロマン ポルシェ。」のボーカル、掟ポルシェ氏らがツイッター上で言及した。

 自分の肩書きという、この上なく小さな話題について、これだけの人を巻き込めることに素直に驚嘆する。はあちゅう氏にはぜひ、30歳を越えて急に社会問題に目覚めたりせず、いつまでもその自意識を振り回して世の中をうんざりさせてほしい。決して人のために何か役立つことをしようなどと考えないでほしい。現代の日本が抱える課題は数多くあるが、こういう人がただ自意識を見せつけて周りが腹を立てているうちは、まだ大丈夫な気がする。

  
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