2024年11月22日(金)

東大教授 浜野保樹のメディア対談録

2010年6月25日

 娘は最初、1回見たとき「やっちゃったね、お父さん。あそこのカット長くない?」とか、「あそこちょっともたついてない?」とか言ってたんですけども、2回目見たときは、「大丈夫だった」と。「ぼーっと見てたら面白かったよ」と。だから、お父さん、何か失敗してないかなという目ではらはらして見ると、ここ駄目、ここ駄目ってなるけども、「ぼーっと見てると楽しかったよ」という。

浜野 映画はまたやるんですか。

狙うのは「ブルース・ブラザーズ」の線

中島 僕は、結構これは自分としてはやりどころは意外とあるなと。

 浜野さんつながりでいろんな映画監督、映画作家の皆さん知ってますけど、ホラ、僕って文化祭の盛り上げ役、リーダー役っていうノリでしょう。自分が尊敬しているような、全知全能タイプの監督には、まずなれない。

「ブルース・ブラザース」1,800円(税込) 発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント

 心底リスペクトしているメディアなだけに、うかつに手を出すまいと思ってきていたんですが、自分の作れる映画もあるかなと思い始めています。それというのも、『矢島美容室』はカテゴリーとして意外と珍しいんで。

 最近指摘を受けたんですけど、アメリカの映画で、音楽プラス、コメディ、それもテレビの番組が母体(「矢島美容室」はTVバラエティ番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」から生まれた音楽ユニット)っていう『ブルース・ブラザーズ』(1980年)と似てる。ジャンル的に、この種の映画は日本になかったんです。

浜野 これも聞こうと思ってたんだけど、ビートルズになりたかった中島さんは、生まれ変わったらどうします? やっぱりビートルズになりたいですか。

 中島 うーん。こういう顔で生まれて、やっぱり三十路過ぎたくらいからいわゆるその「抜け毛」が激しくなるんだったら、ビートルズはないでしょう。中島信也ですよ(笑)。

 背負うものは「自分」なんだろうなという感じですね。その「自分」が、今の僕なのか、それとももうちょっとこのままやっていけるんだったら、その先に待っている僕なのかは分からないですけれども。

 もしかしたら、「その先の自分」にある種期待を持ててるというのは幸せなことだと思うんですよね。この先、何かちょっと期待できそうだなというふうに自分に思えるというのは、ものすごく恵まれていると思うんですけども、そういった部分で自分というものを背負えているということにおいては、これはすごくありがたい立場に僕はありますので、そういう形であれば、このいかつい風貌とともに僕というものを背負っていくということについては、そんな悪い気はしないなというふうなのが、現実思っているところですね。

次回6月28日につづく

(司会・構成=谷口智彦 明治大学国際日本学部客員教授)

中島信也(なかじま・しんや)
(株)東北新社専務取締役 CMディレクター
1959年福岡県生まれ大阪育ち。1982年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒。同年、東北新社へ入社後、1983年にTVCM演出家となる。
1993、94、95、96年に日清カップヌードル"hungry?"で日本人として初のカンヌ国際CMフェスティバルグランプリ・金・銀・銅賞を受賞。 近年ではサントリーの「伊右衛門」「DAKARA」「燃焼系アミノ式」「PEPSI NEX」、資生堂の「新しい私になって」などを手がける。
2010年4月公開された映画「矢島美容室THE MOVIE~夢をつかまネバダ~」は、「ウルトラマンゼアス」(1996年)に続き、2回目の監督作品。


新着記事

»もっと見る