前回の内容 タレントとスタッフは幸せか?浜野 辞めなかったのはそれでわかったけど、それじゃあどうして経営とクリエイティブと、いまだに二刀流なんですか? 野球で言えば四番打者が監督やってるみたいなもんでしょ、中島さんの場合。
中島 ひとつは、僕の仕事が、「お声が掛かってなんぼ」という類のもの、ご発注いただいて始まる種類の仕事だからだと思うんです。
中島信也には実績、経験があって、広告主さんたちに認知されてる。すると、社運を賭けたプロジェクトなんかが、ご指名で僕のところに来たりするわけですね。これがある限り、僕はやめるわけにいかないでしょう。クリエイターとしての命綱、でもある、それはね。「中島さん出してくれないと困るよ」。「え、中島さん、もう経営なの、現場じゃなくて。どういうつもり、東北新社って? 中島さんに経営させて、我々の作業に触ってくれないの」なんて話が裏でしこたま。すると変な話、中島って経営できへんのとちゃうかって逆の評判も立ったり、ね(笑)。
浜野 できるの? 経営(笑)。
中島 今のヤングたちに勇気を与えて、いいものを作ることが僕らの仕事だよと伝えていくのは自分の責務かなと思っていますよ。そういう意味では計数より教育かな、向いているのは。それでも僕も会社の数字がちょっとは読めるようになりましたけどね。百万円と十億円の桁、わかるようになりましたもん(笑)。
映画づくりの面白さ
浜野 そこで話を映画にもっていきたいんだけど、『矢島美容室』ね。あれも、やっぱり先方からの依頼だったんですか。
中島 依頼だったですね。
浜野 とんねるずからの?
中島 そう。とんねるずのお2人、フジテレビからの依頼で、これは信也さんしかいないだろうってことでお話が来たというのがスタート地点です。
(C)1996円谷プロ/ソニー・ピクチャーズエンタテンメント/アニプレックス/電通
前にやっぱりとんねるずで1本作りました。1996年3月公開の「ウルトラマンゼアス」で、主人公のウルトラマンゼアスはとんねるずのマネジャーだった関口正晴さんを起用したコメディタッチの。あの頃と比べると、自分の演出能力は少しは上がったはずだっていう自信、ですよね、それがまずあった。物語をつくっていく力もついてるだろうし、やってみよう、ってね。
浜野 90分モノ本編映画。作ってみてどうでした?
中島 これはやっぱり劇場というもので自分の映画、映像を知らない人が反応している感じというのは、もうたまらなくうれしいものがありますね。僕、この前の日曜日、初めて息子が「見ていいよ」と言ったので、息子と近所の映画館に…。