なぜ、相手を見極めることが大切か
――打ち合わせの狙いが相手に伝わっているかどうかを見極めることが、映画全体をイメージに近づけることに繋がるのですね。イメージが伝わりやすい相手、そうではない相手というのはありますか。
片渕:それは、仕事をしている時以外の相手の側面をどれだけ知っているか、にも関わってくると思います。『BLACK LAGOON』という作品を監督していた時、スタッフの荒木哲郎くん(『進撃の巨人』の監督、『BLACK LAGOON』には絵コンテ・演出として参加)に指摘されて気づいたんですが、僕は仕事の合間にスタジオを歩き回り、結構アニメーターに話しかけていたそうなんです。自分では意識していなかったけれど、荒木くんに「演出家はそうあるべきだと思いました」と言われたことがあります。
僕としては、アニメーション作りにおける自分の仕事というのは自分ひとりで机に向かう孤独な作業になりがちと思っているので、その孤独感をちょっとでも和らげようとしていたんだと思います。でも、そうやってアニメーターと話すことで、その人の個性やものの考え方に触れていたんですね。その人がどういう人か理解できていれば、たとえ狙いと違った原画があがってきても理解することができるし、修正のディレクションもしやすいんです。打ち合わせでその人に伝わりやすい表現を考えることもできますし。
結局、アニメというのは人の力を借りないと作り上げることができない。となると、一緒に仕事をする人が、どんなふうに参加してくれているかを見極めてお願いしていくしかないんです。