この社説は、中国が2隻目の空母を進水させたのは人民解放軍が遠い将来超大国になることを目標に軍備増強をしている野心の現れであると指摘しています。その通りでしょう。そのことの持つ意味をよく考え、それに対処していくことを考えるのが最も重要です。
ところが、この論説は中国の空母建造計画が秘密にされていることなど、軍備増強に透明性がかけていることを重視しています。しかし、中国の軍備増強計画に透明性がかけていることは問題の本質ではありません。軍備が増強されていることが問題の本質です。このことを勘違いしてはいけません。
日本の防衛費の3.3倍
中国の2017年の国防予算は3月に公表されましたが、初めて1兆元を超え、1兆440億元(約17兆2000億円)でした。日本の防衛費の3.3倍です。対前年比7%以上の伸びであり、2017年の経済成長率は6.5%前後とされていますから、これまで同様、経済成長率を上回る伸びです。加えて中国の国防費には、他の国では国防費とされる経費が計上されていないように思われます。
いずれにせよ、中国は富国強兵政策のうち、強兵にはずっと力を入れてきているのです。
米国のトランプ政権は国防に力を入れるとしており、2017年の国防予算は前年より約200億ドル増額されています。いずれにせよ、米中の間の軍事力には相当な差がある現状はまだまだ続くでしょう。
日米同盟全体としては、まだ30年間は中国に対して軍事的に優位に立てるとの見通しもあるので、そう慌てることはありません。しかし、ASEAN諸国などが中国の軍事的圧力を感じる日はそう遠くないでしょう。たとえば、今インドネシアは中国の漁船団に対し、自分が主張する排他的経済水域(EEZ)内で強い対応をしていますが、中国空母が出てきたときにもそうできるか、疑問があります。
社説は、台湾、ベトナムが中国のA2AD(接近阻止・地域拒否)戦略を参考にし得るのではないかと示唆しています。この点は大変示唆に富むと言ってよいでしょう。
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