2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年5月22日

 ニューヨーク・タイムズ紙の4月17日付解説記事が、北朝鮮の核・ミサイル計画は、北朝鮮体制の崩壊という脅威に対処するためのものであり、トランプはいずれ、北朝鮮が力や脅しで解決できない、より複雑な力学に動かされていることに気づくだろう、と言っています。要旨は以下の通りです。

(iStock)

 北朝鮮の弱みこそが、国の歴史と国内の力学と相まって、同国指導者にコストを顧みず核とミサイル計画を追求させている。トランプはいずれ、北朝鮮は力や脅しで解決できない、より複雑な力学に動かされていることに気づくだろう。

 北朝鮮の核、ミサイル計画は、体制の崩壊という脅威に対処する戦略の中核をなすものである。冷戦後、世界中で共産主義政権が倒れ、北朝鮮も続くと思われた。当時の指導者の金正日は、軍優先の「先軍」政策で対応し、いつ起きてもおかしくない戦争への準備態勢を整えた。この政策で、北朝鮮の物不足と配給が巨大な軍の維持に必要であることを説明するとともに、国内の敵を一掃し、戦時によくある愛国主義を鼓舞するため、弾圧を正当化しようとした。

 今日、北朝鮮は安定しているように見える。しかし、そのため、常に戦争に近い状態にあるという代価を払っている。外国の脅しも譲歩も、この状況を変えられなかった。

 ソ連の支援を失い、米国とその同盟国の脅威にさらされた金正日は、いかなる戦争もコストが大きすぎるようにしようとした。

 当初、核・ミサイル計画は、米国との「大取引」の取引材料と考えられていた。しかし、戦争のリスクを伴う挑発が繰り返されるにつれ、核・ミサイル計画は象徴的に有用であるのみならず、戦略的に必要となった。北朝鮮は近隣国からの攻撃を恐れ、計画の中止は国の壊滅をもたらすとして、核・ミサイル計画を中止できなくなった。

 米国の強さもまた逆説的に弱さを意味する。北朝鮮は短時間のうちに米国の全面攻撃にさらされることを知っている。従って紛争の初めから核攻撃にエスカレートさせる以外に選択肢はない。また北朝鮮は米国が政権を打倒しようとすることを恐れ、核での報復を繰り返し警告している。このように北朝鮮の弱みが米国の選択を制限している。

 北朝鮮に対する懲罰的攻撃、あるいは核・ミサイル計画を妨害する攻撃は、北朝鮮の全面攻撃への恐れを呼び起こし、核紛争に至るであろう。

 北朝鮮の核弾頭搭載ICBMの開発は、全面戦争以外に阻止できないだろう。サイバー攻撃は開発を遅らせるだけである。

 情報分析家は、時間とともにリスクは大きくなると見ている。Arms Control Association のDaryl G. Camball専務理事は、現在の「行動―反応」というパターンが続けば、朝鮮半島非核化の見通しを暗くするのみならず、破滅的な核戦争のリスクが増大するだろうと述べている。John R. Bolton元国連大使は、北朝鮮の核兵器計画を終わらせる唯一の方法は北朝鮮を終わらせることであると言っている。

出典:Max Fisher,‘The North Korea Paradox: Why There Are No Good Options on Nuclear Arms’(New York Times, April 17, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/04/17/world/asia/north-korea-nuclear-weapons-missiles-sanctions.html?_r=0


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