2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年5月22日

 この解説記事は、いくつかの重要な点を述べています。

北朝鮮の最大の懸念

 第1は、北朝鮮にとって最大の懸念は体制の崩壊である、ということです。北朝鮮が核・ミサイル計画を推進するのは体制崩壊の脅威に対処するためであり、挑発的に振る舞うのは、政権の正統性が危機に瀕しているとの自覚からであり、常に戦争に近い状態にあるのも体制の崩壊を防ぐためです。もし体制の崩壊が北朝鮮の最大の懸念であるとすれば、米国などによる力の誇示や脅しは効きません。戦術的に、一時的に核実験を中止するといったような対応はするかもしれませんが、核・ミサイル計画はやめないでしょう。

 第2は、北朝鮮が、紛争の当初から核攻撃にエスカレートさせられる態勢を取っていることです。これは、核による報復を警告することにより、米国などの攻撃(懲罰的攻撃と全面攻撃の両方を含む)を阻止しようとするものです。トランプ政権は、北朝鮮に対し力の行使も辞せずとの姿勢を取っていますが、北朝鮮の考えがこのようなものであれば、米国がどのような攻撃をするにせよ全面対決にエスカレートする恐れがあるということです。

 さらに、解説記事は、北朝鮮の核弾頭搭載ICBMの開発は、全面戦争以外に阻止できないであろうと言っています。トランプ政権は米国に届くようなミサイルの開発は許せないと言っていますが、具体的にどのような対策を考えているのか明らかではありません。

 解説記事の主要点は正鵠を射ていると思われます。もしそうであれば、北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐる危機の解は容易に見出せないということになります。トランプは中国に期待しているようですが、中国は北朝鮮政権の存続を危うくするような制裁の強化はできないでしょう。とすれば、ある時点で、トランプは中国の対応に失望するでしょう。トランプは中国が対応しないならば米国がすると言っているので、その時、危機は深刻な局面を迎えることとなります。

  
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