2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年5月19日

 イラン米国協議会のカリス研究員とマラシ研究部長が、4月19日付け Huffingtonpost掲載の論説で、今回トランプ政権はイランが核合意を順守していると認定、議会に報告したが、トランプが合意破棄に向かうかもしれないとの懸念はなくならない、と述べています。論説の要旨は次の通りです。

(iStock)

 4月18日、トランプ政権はイランが核合意を順守していると認定した。同時にトランプは国家安全保障会議(NSC)の各省検討委員会に合意に規定されている米の制裁解除義務が米の安全保障にとって重要であるかどうかを再検討するよう指示した。これまでイラン核合意を「最悪の合意」と批判してきたトランプは合意破棄を断念したのだろうか。三つのポイントがある。

 第一に、新政権が従来の政策を再検討するのは通常のことである。イラン合意は前政権の政府関係者によって極めて綿密に検討されてきた。しかし、イラン合意に反対してきた人々が政治任命者として大統領府に入っている。今回の発表は良いことだが、トランプ政権が合意を政治化し、壊すリスクはある。

 第二に、今回の認定はトランプ政権の今後の再検討の方向を示すものではない。今回の決定はイラン核合意再検討法によって90日毎に議会に報告するよう求められているから行ったものである。それを行わないと制裁が再導入される。それゆえ、今回の認定を以てトランプ政権がイラン核合意を受け入れるようになったと考えるのは読みすぎである。

 第三に、今回の決定は合意反対派のアプローチと整合しないものではない。彼らはイランに問題を突き付け、イランの経済利益を否定し、イラン側から核合意を破棄するように追い込もうとしている。トランプ政権は今後も「合意が機能していない」と主張できる。議会には核合意と矛盾するような制裁法案を提出する動きがある。これは米・イラン間に築かれた信頼を壊すものだが、トランプ政権は「制裁は核問題に関するものではないので、核合意に反しない」と主張している。その場合、イラン合意順守は認定され、制裁解除は継続されるかもしれないが、合意はやり直されたと同然になる。

 トランプも、合意を破棄することは簡単だが、「外交か戦争か、どちらか一つ」を選択せねばならないという統治の重荷について、北朝鮮問題を通じて学習しつつある。しかし、今回のイラン核合意順守の認定によっても、トランプが後者の選択をするかもしれないとの懸念は完全にはなくならない。

出典:Tyler Cullis & Reza Marashi,‘Has Donald Trump Learned To Love The Iran Deal?’(Huffingtonpost, April 19, 2017)
http://www.huffingtonpost.com/entry/has-donald-trump-learned-to-love-the-iran-deal_us_58f7b8fee4b05b9d613fbce9


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