2024年12月9日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年5月12日

 モレル元CIA長官代行とファルカス元米国防省ロシア担当次官補が、4月11日付けニューヨーク・タイムズ紙に「ロシアはトランプを試しているのか」と題する論説を寄せ、最近のロシアのやり方に対する米国の不満を表明しています。論説の概要、次の通り。

(iStock)

 シリアは、プーチンがトランプ就任後世界で行っている破壊的活動の一例に過ぎない。1月、東部ウクライナの分離主義者は多分プーチンの指示の下、ウクライナ政府軍への戦闘をここ1年半で最も高いレベルにした。ミンスク合意への直接的挑戦である。

 2月半ば、プーチンは東部ウクライナの分離政府が発行する旅券を認めるとの指令を出した。その後、プーチンの賛同、あるいは許容の下、ルハンスクでロシアルーブルを法定通貨にすることが発表された。東部ウクライナへのロシア主権の拡大である。

 1月、白ロシア(ベラルーシ)でのロシア軍駐留増加を受け入れさせるため、白ロシア国境に軍を集結させた。3月には南オセチア(グルジアの分離共和国)の軍をロシア軍に編入した。3月、スカパロッティ将軍(欧州での米軍司令官)は議会で、ロシアとタリバンの接近が見られる、ロシアがタリバンに武器供与をしていると述べた。

 最近、トマス・ワルドハウザー(アフリカ米軍司令官)は、リビアでロシアはトリポリの国連が認める政府に抵抗しているハフタールを支援していると指摘した。シリアの独裁者アサドを支持し続けている。

 これらには共通する面がある。隣国の政治的支配を望み世界的強国と見られたいプーチンは、トランプ大統領を試している。対ロ制裁解除はもう望めないと考えていようが、トランプがどこまで侵略行動を許容するか知りたいと考えている。

 トランプ政権はどう対応したか。ペンス副大統領、マティス国防長官、ヘイリー国連大使は強くロシアを非難したが、トランプからは非難も行動もない。政権は明確な対ロ政策を持つ必要がある。何が受け入れ不可能かを伝え、協力分野を現実的に探るべきである。

 トランプ大統領は大西洋の安全保障への米の関心を確認する演説を行い、民主主義、自由な市場経済、NATO又はEU加盟を選択する諸国家の権利について明確に話すべきである。米国のロシア政策は、NATO領域での軍の駐留、演習、ロシアの脅威にさらされている非NATOのパートナーへの訓練、装備への予算手当てを含むべきである。同時に核、通常兵器、サイバーの軍備管理を進めるべきである。

 トランプ大統領は、ロシアにシリアでの政権移行を支持することも求めるべきである。シリアの飛行場爆撃だけでは十分でない。トランプ大統領が好むと好まざるにかかわらず、プ―チンは米国を敵視し、米国の立場を掘り崩そうとしている。トランプは「もういい」という必要がある。

出典:Michael J. Morell & Evelyn Farkas,‘Is Russia Testing Trump?’(New York Times, April 11, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/04/11/opinion/is-russia-testing-trump.html


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