CNAS(新アメリカ安全保障センター)のフォンテイン会長が、中国の、台湾ひいてはアジア太平洋諸国に対する経済的圧力を成功させないためには、米台・日台FTA、その他、地域の共同対処が重要であるとする論説を、3月27日付けウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿しています。要旨、次の通り。
2016年の蔡英文総統選出後、中国は台湾への経済的圧力を増やしている。中国は、蔡英文に中国は一つ、との「1992年コンセンサス」を認めるよう要求している。蔡英文がそれに応じないので、中国は、台湾の大陸委員会との対話を停止し、台湾への中国人観光客の数を60%近くも減らした。台湾の観光産業は打撃を受けた。最近、中国は台湾の大学に留学生削減の脅しをかけ、親中的声明を出すよう要求したと報じられている。
貿易、投資の流れ、中台間の航空便は続いているが、中国は経済的圧迫に他の措置も加えている。馬英九時代の外交休戦をやめ、昨年、中国はガンビアと外交関係を樹立し、サントメは外交的承認を台湾から中国に切り替えた。昨年12月には、中国海軍の空母が台湾の東岸を通過し南シナ海に向かい、台湾海峡を通過して帰港した。
蔡英文は、東南アジアやインドとの貿易・投資を促進し大陸への依存を減らす新たな「南方政策」で中国の経済的圧力に対抗しようとしているが、課題は大きい。中国は、台湾の最大の貿易パートナー(台湾の輸出の40%は大陸および香港向け)、最大の投資先である。
台湾は、南方政策により、貿易、投資、観光の促進を目指す新たな公式の合意等を模索しているが、台湾との経済的関係を深めるような東南アジア諸国のあらゆる公式の動きに対する中国の拒否権が、大きなハードルとなっている。
台湾の意味ある多様化政策はもっと遠くを見て、日米などを含むべきである。トランプ政権はTPP反対、二国間協定推進を主張しているが、台湾の当局者は米国との二国間協定の交渉への意欲を強調している。
日本も同様の方向に動き始めるかもしれない。二国間貿易協定の台湾にとっての利益は明白だが、パートナー国にとっても利益がある。台湾の経済は世界で25位以内の規模であり、米国の9番目の貿易パートナー(豪印より上)である。日本にとり台湾は4番目の貿易パートナー(独ロより上)である。
中国は外交政策上の結果を強要するために経済的手段を用いる。2010年に尖閣をめぐる緊張を受け日本へのレアアース輸出を停止したし、2012年にはスカボロー礁をめぐる対立を受け、フィリピンのバナナを禁輸にした。今、中国はミサイル防衛の配備をめぐり韓国を懲罰している。豪なども自らの脆弱性を心配している。
こうした中国のやり方に対する共同の対処が、そうしたやり方の成功のチャンスを低下させ、地域の自由な意思決定を保証する。民主的近隣国への威嚇の企ては屈服ではなく反発を招くとの明確なシグナルを中国に送ることが役に立つだろう。
出典:Richard Fontaine,‘Taiwan’s Answer to Chinese Economic Coercion’(Wall Street Journal, March 27, 2017)
https://www.wsj.com/articles/taiwans-answer-to-chinese-economic-coercion-1490642494