2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年5月19日

 トランプは、これまでイラン核合意につき、最悪の合意であり、これを破棄する、と言ってきました。他方、4月18日にティラーソン国務長官はイランが合意を順守していると認定し、それを議会に報告しました。イラン核合意再検討法に基づき、国務長官は90日毎にイランの合意順守状況の認定を議会に報告するよう求められています。

 論説の筆者は、今回の報告を以てトランプ政権がイラン核合意を容認することになったと思ってはならないとしています。驚きのコメントではありません。トランプ政権の対イラン政策に係るイランの不信、警戒心は根深いものがあり、それは続くでしょう。

イランは北朝鮮と同じだ

 トランプ政権のイランに対するレトリックは引き続き厳しいです。4月19日の記者会見でティラーソンは厳しい発言をしました。「イランは北朝鮮と同じだ、トランプ政権は責任を将来の世代に回す意図はないなど」と述べました。しかし、ティラーソンの発言をよく見ると、イラン合意は「失敗」だと述べてはいますが、正確に見れば、「非核のイランを達成することには失敗した。核化を遅らせるだけだ」と述べており、合意破棄までは言っていません。

 トランプ政権の強硬なレトリックは続いていくのでしょう。議会報告の直後であるにも拘らず、4月20日に行われた伊首相との共同記者会見で、トランプは「サインすべきではなかった」、「イランは合意の精神に従っていない」と主張しています。その根拠も不明です。しかし、トランプ政権の実際の政策はレトリック通りには行かない傾向が一般的になりつつあります。言葉と実際の行動が大きく乖離することは、信頼性のある外交を進める上では良いことではありません。

 イラン合意については、破棄されることなく現在のような緊張を続けていくことになるのではないかと思われます。マティス国防長官は、当初から破棄はすべきでないとの意見を持っています。ドイツなど欧州関係国や核合意交渉を行った関係国は合意を破棄しないようトランプに求めています。トランプにもベターな代替案がある訳ではありません。合意の無い状態より不完全であっても今の状態がまだベターでしょう。

 だだし、米議会の動向とイランの行動には注意していく必要があります。米議会の強硬派は、今回の決定などトランプ政権の動向に当惑していると言います。議会が強硬な制裁を求めれば、波乱要因になります。また、イランが挑発的行動をとれば、やはり波乱要因になります。本論説が指摘する通り、米議会強硬派の狙いはイランを追い込み、イラン側から合意を破棄するような状況を作ろうとしているのでしょう。

  
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