朝鮮戦争に終止符を打つ平和条約と、北朝鮮の核・ミサイル計画が密接に関係していることは明らかです。
まず、平和条約そのものについて、北朝鮮が米国との間で平和条約を望んでいることは間違いありません。平和条約が結ばれれば、米国は北朝鮮を主権国家として、北朝鮮政府を正統な政府として認めることになります。米国と北朝鮮の戦争状態が正式に終結されるので、敵対関係は基本的に緩和されます。北朝鮮は、「駐韓米軍は不要となった」と主張するでしょう。
他方、平和条約は米国にとっても基本的には望ましいものです。敵対関係が緩和されることは、東アジアの平和と安定のため、米国の望むところでもあります。
しかし、現在のように米国と北朝鮮が対決している状態では、平和条約に至る道筋はまったく不透明です。平和条約交渉の可能性を探るためには、現在の対決姿勢を徐々に緩和していく必要があります。
次に、平和条約と北朝鮮の核・ミサイル計画との関係ですが、平和交渉を始めるとすれば、対決の最大の要因である北朝鮮の核・ミサイル開発をどうするかの問題に取り組まなければなりません。
米国は北朝鮮による核・ミサイル計画の放棄を交渉の前提と考えるでしょう。他方、北朝鮮にとり、これは受け入れられない前提条件です。双方の立場を考えれば、交渉を始める条件は核・ミサイル計画の凍結以外に考えられません。
交渉が始まったとしても、どうまとめられ得るのでしょうか。米国は平和条約締結の条件として、核・ミサイル計画の放棄を求めるでしょう。しかし、北朝鮮が求めているのは、米国が北朝鮮を核攻撃しないという保証です。平和条約を結べば、米国が北朝鮮を核攻撃する可能性はかなり低くなるでしょうが、絶対しないという保証にはなりません。論説は、金正恩はサダム・フセインやカダフィのような運命をたどらない保証を受け取ることなしに、核とミサイルは放棄しないだろう、と言っています。米国が平和条約を結んだ上に、北朝鮮を核攻撃しないという保証を与えることは考えにくいことです。もしそうとすれば、結局、北朝鮮が米国の万が一の核攻撃を防ぐためには、米国を核攻撃できる能力を持つという、米国に対する核の抑止力を整備する以外に考えられません。
論説は、北朝鮮との平和条約の締結が、北朝鮮の核・ミサイル計画の廃棄につながる、と述べていますが、それは米国はじめ西側諸国のいわば希望的観測とも言うべきもので、北朝鮮の国家生存の論理から言えば、核・ミサイル開発は止められないことになります。その場合、平和条約締結の条件としては、米国は容易に受け入れないでしょうが、北朝鮮の核・ミサイル計画の廃棄ではなく、凍結が考えられることになります。
また、朝鮮戦争の休戦協定の署名者には、米国(国連軍)、北朝鮮の他に中国がいます。韓国も朝鮮戦争の当事国です。中国と韓国が、仮に平和条約交渉が課題となった場合、北朝鮮の核・ミサイル問題をどう考えるかも考慮する必要があります。
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