2024年11月24日(日)

WEDGE REPORT

2017年7月17日

マクロン夫人を年寄り扱いしたトランプ大統領

 トランプは最初にマクロン大統領夫人に、こう言っている。

You’re in good shape.

 これは実は解釈によっては「(首相夫人になって)うまいことやりましたね」とも受け止められかねない。そこで慌てたように、こう続けた。

You’re physically in good shape. Beautiful.
(体を良い状態に保っておられる。おきれいで)

 だが一緒にスポーツをしているわけでもない相手にいきなりこう言うのは、「(その歳なのに)お元気そうで」というニュアンスになる。

My father is in good shape for his age. He is 88 now.
(父は年齢の割には元気です。今、88歳ですから)

 このように使うのだ。

 良く知られている事実だが、マクロン大統領は今年の末に40歳になる。一方ブリジット夫人は64歳になったところで、二人は何と24歳もの年齢差だ。高校生のとき、教師でもあり同級生の野母親でもあったブリジットさんと出会った。若さよりも、洗練された大人の女性が高く評価されるフランス社会を象徴しているような、ファーストカップルなのである。

 その一方で、トランプ大統領は次々と若い美女をとっかえひっかえしてきた、絵に描いたような俗物だ。自分は71歳で、妻のメラニア夫人は47歳。まあ成金親父としては、あまり珍しい話ではないかもしれないが、奇しくもその年齢差はマクロン夫妻と同じ24歳なのである。

恐らくはお世辞のつもりだった

 トランプにしてみれば、マクロン大統領のようにものすごく年上の古女房を未だに大事にしている男の心理は、とても理解できないのだろう。

 そこで、彼なりに考えた。マクロン夫人に、「まだまだイケてますよ」というつもりで、You’re physically in good shape.(お元気そうで)と彼にしては精一杯のお世辞のつもりで言ったのに違いない。

 女性に対して、まして仮にも一国の大統領が訪問先の大統領夫人に対して、下品で無礼なコメントと批判されても仕方ない。彼女の体のメンテナンス状態の評価など、フィジカルトレイナーや主治医でもあるまいし、大きなお世話なのである。

 というのが、今回のトランプ失言が批判されている所以なのだ。

 だが考えてみると、気をつけないと我が国の政治家もこのぐらいの失言はやりそうだ。

「スタイルが良い」と褒める場合は

 さてそれでは、「スタイルが良いですね」と褒めたいときは英語では何と言うのか。

 ストレートにYou have a beautiful body.という表現を男性が使うのは、相手が恋人や妻の場合のみ。それもかなりセクシーな状況でしか言わない。会ったばかりの女性にいきなりそんなことを言ったら、平手打ちを食う。

 英語社会では、たとえ褒めるにしても他人の体型についてコメントすることはあまり品の良いこととはされておらず、するときにはかなり神経を使う。一般的に、

You look great.
You look amazing.

 というように、具体的ではなく「すごくかっこよく見える」というようなニュアンスのコメントに留めるのが普通だ。

 親しい女性同士で、「スタイルが良くて羨ましいなあ」というニュアンスなら、

You have a nice figure.(スタイル良いわね)という言い方をすることもある。

 でもあくまで「親しい女性同士」での会話。男性がいきなり女性にそう言ったらかなり「キモい」ヤツと思われる。

 今回のトランプも、本来の彼の性格ならばマクロン夫人にYou have a nice figure.くらいの「お世辞」を言いたかったに違いない。

 だがさすがにそれは、一国の大統領としてまずい、という程度の認識はあったのだろう。本人は恐らく現在でも、あの発言のどこが悪かったのか、あまり理解していないのではないかと想像する。

■編集部より:2ページ目、マクロン大統領とブリジット夫人の出会いの記述について、より詳細な情報を入れました。(2017/07/19 10:02)

  
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