3Dプリンターで若者のものづくりコンテスト
筆者は滞在中、ITと教育とものづくりを結びつけるロシアの取り組みを偶然目にした。シベリア各地の企業や大学、研究機関が参加するハイテク技術見本市「テクノプロム」を覗いたときのことである。
大型展示施設に設けられた見本市会場の一角で、10代後半から20代前半と思われる若者数十人が、ずらりと並んだパソコンとその横の3Dプリンターでなにやら玩具のような小物を制作していた。皆真剣な表情である。このうち2人組の女の子に何をしているのか聞くと、3D-CADと3Dプリンターを使った造形コンテストだとの答えが返ってきた。2人とも17歳。制作のテーマとして「リハビリの道具に使えるもの」というお題が与えられていて、自分たちは今流行中の玩具「ハンドスピナー」を制作しているとのこと。
近くには「ノボシビルスク知事杯」という大きな表示も見える。運営者に尋ねたところ、これはロシア全土で展開中のIT教育プロジェクトの一環で、サンクトペテルブルクに本部を置く教育NPOと、ロシア政府の科学教育省、ノボシビルスク州政府が協力して実施している。コンテスト自体は今年が4年目だという。初年度はモスクワに近い一つの州だけだったが、2年目から他地域に広がり、昨年からノボシビルスクでも開催するようになった。今年は地元の高校生・大学生でつくる約40チームが応募し、その中から予選で15チームが選ばれ、今日ここに集まって制作に取り組んでいるのだという。
各地域で優勝したチームは、翌春に開かれる全国ファイナル大会に集結する。来春はモスクワが会場になるそうだ。このファイナルは、EUや中央アジアからも若者が参加する国際大会になる。NPO職員のタチアナ・マシュタコバさんは「今のところ日本からの問い合わせはないが、大歓迎するのでぜひ参加して欲しい」と話していた。
中期的な視野で製造業の人材を育てようとしているロシア。連載3回目では、シベリアでの直近のものづくりの様子をレポートする。
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