2024年12月7日(土)

Wedge REPORT

2010年8月23日

 日本が、核戦力増強中の中国との原子力協力を継続しているのに、NPT非加盟との理由だけでインドを差別し、一切の原子力協力に応じないのは、いかにも教条的で、狭量だといわざるを得ない。日本人の反核感情や非核政策は今後も大事にすべきだが、自らは米国の「核の傘」に安住しながら、アジアで最も親日的な国を一方的に非難し、そのニーズに応えようとしない、頑なな態度は決して褒められたものではない。英語の格言にいう"A friend in need is a friend indeed"(困ったときの友が真の友)を今こそ日本人は噛みしめるべきではないか。いかに悲惨、過酷だったとはいえ、自らの被爆体験を相手に一方的に押し付けようとするのは、かつて我々の父祖や先輩たちが標榜したような「東洋の君子国」のとるべき態度ではあるまい。

 かく言えばとて、日本が唯一の被爆国として、今後も「核兵器のない世界」の理想に向かって奮闘すべきことはいささかも変わりない。そして、そのための努力と、インドが強く欲する原子力協力(とくに軽水炉技術)に前向きに応ずることは決して矛盾しないものであることを、政府は丁寧に国民に説明すべきである。

 また、筆者は闇雲に日印原子力協力を推進せよと言っているのではない。日本の対印協力が軍事転用される可能性を完全に排除するとともに、インドが「核兵器なき世界」の実現のために責任ある行動を取ることを確約させた上で協力に踏み切るのは当然のことで、協定にはそのことを明記すべきである。紙数の都合で具体的な内容までここで論ずることはできないが、基本的な点での合意が得られれば、細目は外交当局の良識と知恵に任せればよい。その上で、自信を持って正々堂々と日印原子力協力を推進すべきである。
 

◆WEDGE2010年9月号

 

 

 

 

 

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