世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月22日

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 筆者のうち、ピッカリングは、米国務次官を務めたほか、駐印米大使の経験もある人物です。トリヴェディの方は、米商務省、国務省、上院外交委員会に勤務していたことがあります。

 去る6月25、26日のモディ首相とトランプ大統領の首脳会談は、期待以上の成果を上げたといえます。これは一つには、論説も言うように、そもそも期待値が低かったためです。インドは米国にとって、さしたる懸案がないうえに、北朝鮮、中東と言った米国の優先的関心事へのかかわりが多くありません。また、インドにとってトランプ政権の政策への懸念がありました。

 ところが、ふたを開けてみると、モディもトランプも首脳会談に満足した模様です。基本的に二人は波長が合うらしいです。そのうえ、トランプはインドに好意を持っているようで、選挙期間中、「もし大統領になったらインドは真の友人をホワイトハウスに持つだろう」と言っていました。

 今回の首脳会談で重要なのは、安全保障面における米印の協力関係の強化が確認されたことです。

 モディは声明で、「インドの国防力強化に対する米国の支援に深謝する」と述べ、トランプは「米印の安全保障上の協力関係は、非常に重要である」と述べています。

 具体的には、米国がインドにC17輸送機1機と、インド洋上の哨戒任務用の非武装無人偵察機22機を供与することとなりました。

 また米、印に日本も加わった合同海軍演習(マラバール演習)の実施が発表され、7月10~17日、インド洋ベンガル湾で実施されました。米印の合同海軍演習は1992年以来行われていますが、今回はこれまでにない規模で、しかも日本が参加する形で行われ、そのデモンストレーション効果は小さくありません。

 声明では中国には直接触れていませんが、両首脳が両国の安全保障上の協力関係の重要性を強調したのが、中国を念頭に置いてのことであるのは間違いありません。これは、日本にとっても心強いことです。

 今後アジア地域の安全保障が論じられる場合、米印の協力が一つの重要な要因になります。これは、トランプが戦略的思考に欠けると言われている中で、特筆に値することです。

 懸念された経済問題では、年300億ドルにのぼる米国の対印貿易赤字、インドの熟練労働者に対するH-1Bビザの問題などは、共同声明では触れられませんでした。逆に、インド航空による米旅客機100機の発注が発表され、トランプ大統領が満足の意を表しています。

 今後、米印関係は、ニュースのハイライトになるようなことは少ないにせよ、着実に進展することが期待されます。


  
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