世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月30日

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 この論説には、基本的には賛成できます。

 エルドアン政権はクーデタ未遂事件後非常事態宣言を発出、その後、その宣言を4回延長し、エルドアンの独裁といってもよい政治が続いています。クーデタ後、10万人が職を解かれ、投獄された人は約5万人に上ります。メディアの抑圧、人権の侵害が頻発しており、とても民主主義国とは言えません。欧州、米国などでトルコ批判が巻き起こっていることは自然なことです。外交の分野でも対ロ接近、イラン接近など問題があります。

 こういうトルコのやり方を批判しつつも、トルコとの関係を重視する姿勢を示していくことが重要です。トルコを非難し、トルコをロシアの方に追いやっていくことは避けるべきです。この論説が言うように「Turkey’s eastward shift can be halted」(トルコの東向きは止め得る)のです。

 そう判断する理由は次の通りです。

 トルコの対ロ不信は歴史的に相当根強いものがあります。エルドアンはプーチンと今は親しくしていますが、ついこの間までは鋭く対立していました。こういう独裁的指導者間の関係は不安定であり、国民の意識に根付いている歴史的不信感の方を重視すべきです。

 トルコには、世俗主義、民主主義の伝統があります。エルドアンは今、この伝統に対し革命を起こしていますが、この革命の成果を永続させられるか否か、分かりません。世俗主義に対する革命はともかく、民主主義からの逸脱は永続しないのではないでしょうか。非常事態宣言を4度も更新していますが、ずっと非常事態を続けるというわけにはいきません。

 エルドアンを「新しいスルタン」という人がいますが、やはり選挙で選ばれた大統領です。

 大統領の任期は5年であり、エルドアンは5年ごとに選挙の洗礼を受ける必要があります。任期は最大2期10年です。新憲法で任期の数え方を変えたので、新憲法で定める大統領選出後10年、2029年まで大統領であり続けられますが、そこまで国民的人気を保持し続けるのは困難でしょう。ロシアの場合は、皇帝信仰、書記長信仰の伝統があるが、トルコにはそれはありません。

 経済的実利については、トルコにとり、EUとの関係のほうがロシア、イランとの関係よりずっと重みを持ちます。EUがトルコとの関税同盟を更新し、トルコがEUとの関係に利を見出す状況を強めていくことが肝要でしょう。

 トルコは西側に引き寄せていく必要がある重要国であり、そうできる国です。エルドアンよりもトルコ国民の良識に期待すればよいのです。

  
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