世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年9月8日

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 エコノミスト誌の記事が記した中国人民解放軍改革の概要を見ればわかるように、習近平政権の下で進められている今の軍改革は、戦争の遂行をかなり意識したものです。つまり、習氏が改革を通して作り上げていこうとする解放軍は、単なる国内の政権維持や対外的抑止力としての軍ではなく、むしろ限定された対外戦争において確実に勝てるような軍でなければならない、ということです。

 実際、7月30日に、中国軍の建軍90周年を記念して内モンゴルの軍演習場で行った大規模閲兵は、今まで天安門広場で行ったような国威発揚の儀式的な閲兵とは一味違って、まさに戦争の遂行を強く意識した実戦部隊の閲兵であると注目されました。習主席は自ら軍の迷彩服を着用したこの閲兵では「重要講話」を行いましたが、その中で彼が特に強調したのは、戦争すれば必ず勝てるという「必勝」のキーワードです。

 1970年代末期、死去した毛沢東主席の指名した後継者を引き下ろして、毛沢東に取って代わって共産党の最高指導者になろうとした時、鄧小平はベトナムに対する限定的な戦争を発動し、それを機に自らの軍に対する掌握を一気に進めました。

 この鄧小平に習って、今や鄧小平を超えた権威と権力を手に入れようとしている習近平は、やはり、限定的な戦争を一度遂行することによって軍に対するコントロールを盤石なものにして「超独裁者」への道を開こうとしています。彼にとって、中国周辺のどこかで一度戦争を起こす必要がありますが、戦争を起こして負けてしまえば逆に自らの政権を潰す結果となります。だからこそ、戦争すれば必ず勝てる軍隊はどうしても欲しいのです。そのための軍改革だったと言えるでしょう。

 逆に言えば、要するに、この軍改革が完成した暁には、習近平の中国と解放軍はいよいよ、どこかで戦争する可能性は大、ということです。

  
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