人民解放軍(PLA)の創設90周年の8月1日、内モンゴルで行われた軍事パレードでPLAが初めて戦闘演習を披露し、迷彩服姿の習近平が閲兵しました。これはPLA改革が新段階に来たことを示すものである、と8月3日付の英エコノミスト誌が述べています。要旨は次の通りです。
PLAは国内の秩序維持と国土防衛を主たる任務としてきたが、今や習は国外でも軍事力を誇示したい。それには陸海空その他の軍の共同作戦行動が必要で、陸の方が海よりも重要という伝統的思考は捨てなければならない。
習が最初に軍の大改革をしたのは2015年で、国民の統制を主目的とする七軍区制に替わり、チベットや南シナ海等で中国の力を示すべく五大戦区が導入された。また、総兵員数を1980年の半分以下の200万とすることが発表された。
そして今年、習は、戦闘部隊、中堅将校、実戦部隊に関わる改革の第二段階に着手した。5軍団を廃止して軍団の総数を13個にすることが発表され、師団も、より小規模で柔軟性があるとされる旅団に再編成されつつある。
また、習の下で新型の戦闘部隊も大幅に拡大された。20年前、PLAには輸送用のヘリ約100機しかなかったが、その後、航空部隊は14個に倍増し、攻撃用ヘリ数百機も配備された。同様に、海軍も2014年までは海兵隊員が12000人しかいなかったが、今年、4万人への増員計画が報じられた。2000年代半ばまで7個だった特殊作戦部隊も今年1月に11個に増えた。
こうした改変の目的は3つある。第一は、本土を防衛するだけでなく、国外でも戦力を誇示できる、より機動的なPLAを創ることだ。8月1日には中国初の海外基地がジブチで開設された。第二は、陸軍優位を崩すことで、今年1月、初めて海軍中将が五大戦区の1つを指揮することになった。第三は、軍事訓練をより実際的なものにすることで、これはハイテク兵器の採用により必要になった。かつて各軍団の能力には著しい差があったが、今年廃止された軍団はいずれもヘリコプター部隊や特殊部隊を持たず、残った軍団はどちらか、もしくは両方を保有している。より標準化された近代的戦闘部隊への一歩となった。
しかし、ここにはある矛盾がある。中国共産党の権力は、PLAが通常の国軍ではなく、共産党の軍であることに基盤がある。そのため、習は、PLAを統制する党の機関、国家中央軍事委員会も強化してきた。2015年、同委員会は、兵站管理等、軍が担当していた多くの任務を獲得した。また、今年になって同委員会弁公庁は更に格上げされ、その指令は軍の規則と位置付けられた。
これらの改革は、習が党や国有企業にも用いた方式を踏襲しているようだ。そのやり方は、党については腐敗、国有企業については非効率、PLAについてはハイテク戦争に不向き、を指摘して先ず当該機関を批判し、次いで、既得権層の反対を潰すために(と習は主張)上層部を再編し、その後、自らの統制力を強化しつつ中層以下の組織の改革に向かうというものだ。
ただ、軍の改変の方がはるかに先に進んでおり、習が党や国有企業についても更なる改革を行えるかどうかは疑問視されてきた。しかしPLAが指針であるなら、習は党や国有企業についても必ず改革を試みるはずだ。
出典:Economist ‘Reform of China’s army enters a new phase’ (August 3, 2017)
https://www.economist.com/news/china/21725812-overhaul-says-lot-about-xi-jinpings-governing-style-reform-chinas-army-enters-new-phase