
アメリカのトランプ政権は19日、トランスジェンダーの選手をめぐる学校方針をめぐり、ペンシルヴェニア大学への1億7500万ドル規模の連邦政府資金の提供を停止すると発表した。
この措置は、2019年春にホルモン補充療法を開始するまでの3シーズン、競泳の男子選手として活動していたペンシルヴェニア大学のトランスジェンダー選手、リア・トーマスさんが女子の競技に出場したことに関連している。
トーマスさんは2022年、全米大学選手権の女子の競技で優勝したほか、大学の女子選手の最速記録を塗り替えた。
現在は既に卒業しており、大学レベルの競技には出場していない。
ペンシルヴェニア大学が19日に声明で、資金停止を示唆するメディア報道を「認識している」としつつ、「公式の通知や詳細はまだ受け取っていない」と説明した。
ドナルド・トランプ大統領は先月、トランスジェンダー女性の女子競技への参加を禁止する大統領令に署名。トランスジェンダー選手のスポーツ参加を取り締まり、連邦政府のコスト削減に取り組む中での発表となった。
米政府関係者は19日、記者団にあてた電子メールで、「ペンシルヴェニア大学は、女子水泳チームの一員として男子の出場を認め、女性が苦労して獲得した複数の記録を覆した。また、全く手術を受けていない男性のロッカールームへの出入りを許可したことで悪名高い」と述べた。
この関係者によると、大学への資金は国防総省と保健福祉省が提供している。
ペンシルヴェニア大学は、大学スポーツを統括する全米大学体育協会(NCAA)が提示する規則に常に従ってきたと、声明で主張した。
NCAAは先月、大学レベルの競技への参加資格を、「出生時に女性と割り当てられた学生アスリート」のみに変更した。
この方針変更は、トランプ氏がトランスジェンダー女性による女子競技参加を禁止する大統領令に署名した翌日に発表された。
この大統領令は、教育省に対し、連邦資金を受ける教育プログラムにおける性差別を禁止する「教育改正法第9編(タイトルIX)」の実施状況を調査する権限を与えるもの。
それから間もなく、教育省は「タイトルIX違反の疑いがある」として、ペンシルヴェニア大学など複数の学校を対象とした調査を開始すると発表した。ただ、今回の資金停止は、この調査の一環ではない。
トランスジェンダー女性の選手として、過去に女子の競技に出場したトーマスさんは、今回の資金停止措置についてコメントしていない。トーマスさんは以前、「女子の競技全体を脅かすものではない」と、スポーツ界のトランスジェンダー女性を擁護していた。
また、大学生アスリート人口におけるトランスジェンダーの割合は「非常に少ない」とも述べていた。NCAAによると、10人程度だという。
「最も誤解されているのは、私が性別を移行した理由だと思う」と、トーマスさんは2022年に米ABCとスポーツ専門放送局ESPNに話していた。
「みんな『ああ、彼女は有利な立場になって勝てるように、移行したんだ』と言うでしょう。私は幸せになるために、自分に正直でいるために移行したのに」と、トーマスさんは当時述べていた。
トーマスさんの女子競技への出場をめぐっては、ペンシルヴェニア大学の元水泳部員3人が先月、トーマスさんの記録の無効化を求める訴訟を起こした。
こうした中、トランプ大統領はほかの大学への資金提供も停止している。今月初めには、コロンビア大学のキャンパス内で、パレスチナ・ガザ地区での戦争をめぐる反ユダヤ主義的な活動を容認しているとして、連邦政府から同大への4億ドルの助成金を取り消すことを決めた。コロンビア大学は、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争に対する抗議活動の拠点となっている。
ホワイトハウスはまた、メイン大学がトランスジェンダーの学生に女子の競技への出場を認め、連邦法に違反したとして、資金提供を取り下げた。
学生新聞「デイリー・ペンシルヴァニアン」によると、ペンシルヴェニア大学は連邦政府から毎年10億ドル超の資金援助を受けている。
トランプ氏は1968年に、ペンシルヴェニア大学ウォートン・ビジネススクールを卒業している。
(英語記事 White House says it's halting funds to US university over transgender athletes)