この記事の副題は「雇用や投資については、ロドリゴ・ドゥテルテは壊し屋よりも改革者である」というものです。
フィリピン経済は昨年の成長率が6.8%、世界銀行は今年も来年も同じような成長をすると見通しています。これは高い成長であり、喜ぶべきことです。
ただ、これがドゥテルテ大統領の政策がいいからそうなったとは必ずしも言えません。「ドゥテルテ大統領の気まぐれや予測不可能な言動にもかかわらず、経済が好調である」とも言えるからです。ドゥテルテは、米国のトランプ大統領によく比較されますが、米国経済はトランプの経済政策が行き詰っているにもかかわらず好調です。経済が好調か不調かは経済政策にも依存しますが、その他の状況に依存することも多いのではないかと思われます。たとえば、フィリピンのGDPの9%にもなるオフィス委託業務は、具体的には、ユーチューブやフェイスブックなどのサイトのチェック業務などですが、これはドゥテルテが大統領だからではなく、状況の変化がもたらしたものです。
ただ、ドゥテルテがこの経済の好調を腰折れさせず、持続させたのは事実です。そのうえ、公共事業をインフラ整備のために行う、そのために、政府の債務の上限も引き上げると言うのは景気を刺激する政策です。ドゥテルテは経済官僚の話もよく聞くと言いますし、フィリピンの経済の今後は明るいとみてよいのではないでしょうか。
トランプとドゥテルテの違いは国内での支持率です。トランプは30%少しの支持しかありませんが、ドゥテルテは70%以上の支持率を誇っています。それゆえに、トランプと違い、税制改革の法案を議会に採択させる力があります。
公立大学の学費廃止は、大学に行っている人は高額所得者の子弟が多いから、富裕層に補助金を与えることになるとの批判がありますが、学費が高いから低所得層の子弟が大学に行けないということもあるので、一概に学費廃止を良くないと排斥することはありません。教育を受ける機会は社会階層を上に上げるために重要です。教育を受ける機会を拡大することには、色々のメリットがあります。学費廃止より奨学金の方が効率的と思われますが、ドゥテルテの発想を生かす道はいろいろあるでしょう。
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