島の名物をお供に昼から飲む贅沢
深く眠って四時に起き、朝日の見える、東のビーチまで出向いた。残念ながら曇っている。けれど、しばらく見ていると、厚くない雲の下側に、赤く焼けた細い帯が見えた。暗いうちから散歩をするお父さんたち、みんなが、声をかけてくれる。短髪の胡麻塩頭。肩はがっしり。きっと漁師さんだったのだろう。西港へ戻ると、老夫婦が小さな漁船と網などを洗っていた。堤防に置いた籠の中を見ると、小さなエビである。赤車エビらしい。
朝から海辺を歩いて身体が冷えたが、宿へ帰ると風呂の支度は整っていた。窓を開け、早朝の空を見上げながら湯船であたたまる。たった一泊だけれど、この旅は格別だ。風呂上がりにまた、ひと眠りする。
朝飯の、島の名物であるシラスとアジの開きがうまい。昨夜の伊勢エビの頭で出汁をとった味噌汁も比類ない。
九時に宿を出て、また、散策する。標高は、高いところで三十メートルくらいのものらしいが、少し登ると急に眺望が開けたりする。島に唯一の資料館や小学校、中学校、お寺など、見て回り、気がつくとまた、港へ戻っていた。
レンタサイクルで遊ぶ若い娘さんたちや、堤防から貸し竿で釣りを試みるカップルの姿も見える。エビとタコの姿焼を売る店「鈴円本舗」に行きあたって中へ入ると、タコ一匹に片栗粉をまぶしてから鉄板で挟み、なんともうまい、せんべいを焼いてくれた。
しかも、缶ビールも売っている。飲まないという選択肢はない。朝酒となった。
港でぼんやりしていると、ほどなくして、海の目の前の「KITCHEN macha」という店が開店した。どうやら昼から軽く飲めそうだ。タコと貝とエビのアヒージョでボトルのモヒートから白ワインを二杯。まだ昼前だが、かまわずに飲む。うまい。タコ飯やパスタもある。次回はここで、昼食をゆっくり楽しみたいと思う。
船の時刻が迫ってきた。お別れの前に昨日の干物屋に寄ると、長野県伊那市富県(とみがた)小学校のみなさんが、干物作り体験中であった。山の学校の子が、やや興奮しながら島で獲れたタコをさばき、干している。
いい光景を見た。
私は、そのタコを含めて干物各種をクール便で東京へ送る手配をすませ、港へ急いだ。
(写真・阿部吉泰)
名古屋駅から名鉄河和線で河和駅下車(特急で約50分)、河和駅から河和港へ(徒歩約5分)、河和港から高速船(約20分)
TEL:0569-68-2165 〈所在地〉愛知県南知多町日間賀島新井浜62
◎かねと商店
TEL:0569-68-9222 〈所在地〉日間賀島北登立17 〈営業時間〉8時~16時 〈定休日〉不定休
◎鈴円本舗
TEL:0569-68-9110 〈所在地〉日間賀島西浜28 〈営業時間〉8時~17時 〈定休日〉無休
◎KITCHEN macha
TEL:0569-68-3113 〈所在地〉日間賀島西浜2 〈営業時間〉10時30分~20時 *月・木曜は15時30分まで 〈定休日〉火曜
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http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10662