2024年4月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月5日

 直截、透徹な分析です。いずれのポイントもよく理解できます。日本等の核保有は米国の太平洋撤退を意味することになるとして、それは「太平洋の平和な発展よりも軍拡競争と軍事対立の激化をもたらす可能性が高い」と述べるとともに、アジア・プレゼンスを縮小しアジアの不安定化のリスクを取るか、北朝鮮との危険な戦争のリスクを取るか、トランプ政権は戦略ジレンマに嵌っている、「金正恩政権は米国を窮地に追い込んでいる」と述べています。最後にミードは「我々はトランプが、歴代政権が失敗してきたこの問題に成功することを願わねばならない」とも述べています。

 アジアでの米国のプレゼンス維持の重要性を強調しすぎることはありません。米国のプレゼンス維持を前提にしてこそ、アジアの将来とそのためのオプションが開けてきます。特に日本はかかる考えを強固にして、米国との連携協議強化、負担の共有、自国防衛の努力などしていくことが緊要です。アジアの現状やアジアの地勢上の特徴等を考えれば、アジアの国々だけでこの地域の安定を確保、維持していくことは難しいです。

 ミードの議論に敢えて若干のコメントをすれば次の通りです。

 (1)日本が核武装すれば韓国と台湾が続くとして、その場合台湾は日本から秘密の支援を受けるだろうと述べていますが、どういう根拠でしょうか。

 (2)日本のエリート達の意見は核オプションに向かっているように見えるとの観察はどこから来るのでしょうか。

 (3)米中ともに金正恩阻止の支援にロシアを当てにすべきではないという指摘を含めミードのロシア認識は興味深いです。しかしロシアの関与は不可欠のように思えます。

 (4)米国はコストをかけて平和を守ってきたと言いますが、米国が唯一の支払い者であるような議論はもはや当たりません。日本は相当な役割を果たすようになっています。

 この論評は北朝鮮問題を考える際大きいピクチャーも併せ考えていくことの重要性を思い出させてくれます。同時に、アジアの安定、将来を考える場合、やはり鍵は中国であることも認識させられます。中国が膨張主義や軍事巨大化を止め、現状維持勢力として国際協調型の国家になることを望まずにはいられません。

  
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