でも、消費者が因果関係を証明するのがとても難しいのが実情。そんな時によりどころになるのが、どの日にどの程度の量の健康食品を食べ、体調がどうだったか、という記録です。被害の原因が健康食品だという「因果関係」を直接的に証明するものにはなりませんが、もし、摂取回数や摂取量と体調悪化に相関関係があれば、1つの傍証にはなり得ます。
そのため、パンフレットでは、利用するなら記録を付けておくように、と記録用紙まで付けられています。利用する際に確認すべきポイントも記載されています(図2)。まさに至れり尽くせりなのです。
飲み始めの体重減少は、健康を害している!?
Q&Aも、計20の質問と回答で、健康食品を解説しています。最初のQが「栄養の偏りや運動不足があるので、健康食品でカバーしたいです」。アンサーは、『健康維持の基本は「栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な休養」です。この3つに代わる健康食品はありません』
「簡単に痩せるために健康食品を利用したいです」という問いに対しては、「食事のコントロールも運動もせず、健康食品だけで安全に、楽に痩せることはありません」という回答。解説の中では、次のように説明されています。
「下痢を起こして栄養不足により筋肉も減ること」、「利尿作用で水分を減らすこと」などによって、飲み始めに体重を減少させる製品もあります。これは健康を害しているだけで、長い目で見るとダイエットにはなりません。
いやあ、身もふたもない回答が書かれているのです。でも、科学的にはまさにそのとおり。そのほか、多くの人が抱く疑問の数々が、平易に回答・説明されています。
国立健康・栄養研究所のデータベースがお勧め
情報源としてとくに紹介されているのが、国立健康・栄養研究所のデータベース「健康食品」の安全性・有効性情報です。
このサイト、ご存知ですか。気になる健康食品について、成分名で検索できます。たとえば水素水なら、ヒトに対する安全性、有効性の両方で「信頼できる十分なデータが見当たらない」が結論。ウコンに含まれるクルクミンであれば、『俗に、「抗酸化作用がある」「肝臓によい」「発がんを抑制する」などと言われているが、ヒトでの有効性・安全性については信頼できるデータは見当たらない』と一刀両断。
このデータベースは、研究所の科学者が論文等を調べて、科学的な根拠があるかないか、信頼性が高いかどうかをていねいに検討して書かれています。事業者の宣伝文句などは一切、考慮対象ではないので、信頼できます。「この成分、飲んでみたいな」と思ったら、このデータベースでまずは調べてみるのがお勧めです。
消費者庁は、健康食品の規制に関しては一時、「消費者庁という名前であっても、もう消費者の味方ではないのだな」と思わされました。でも、このところ、景品表示法に基づく規制強化を図っており、消費者への注意喚起も熱心です。
健康食品は、年間に2兆円を売り上げるという一大産業になっていますが、その陰で泣いている人が少なくありません。健康被害だけでなく、経済的な被害もあります。また、がん患者などで、健康食品の方が食品だから、医薬品、抗がん剤よりマイルドでよい、などと信じ込み、標準的な治療から遠ざかってしまう問題も軽視できません。ぜひ、パンフレットやQ&Aをチェックしてみてください。
【参考文献】
・国民生活センター・健康食品の摂取により薬物性肝障害を発症することがあります-「医師からの事故情報受付窓口」から-
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170803_1.html
・東京都くらしWEB・テーマ別分析平成28年度「危害」
http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/sodan/tokei/theme.html
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