2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月19日

 このウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説は適切な問題提起をしています。

 中国が外国の機微な技術を入手するために努力していることは周知の事実です。合法的に技術をお金で買うことが多いですが、(1)ハッキングやスパイを通じ、機微な技術を入手すること、(2)ジョイントベンチャーのパートナーに技術移転を要求すること、(3)外国の機微な技術を持つ企業を買収すること、などいろいろな方策を用いています。

 米国は、これらについての中国の活動に注意を払っており、機微技術を持つ企業の中国による買収を阻止する努力をしています。軍事に使える技術については、特に注意して対応しています。技術的優位は軍事的優位の重要な要素です。

 日本でも経産省が、外国からの日本への投資が持つ安全保障上の問題に取り組み始めています。米国はこの問題において経験が日本よりずっと多いので、米国のやり方を参考にするべく、研究していく必要があります。

 日本は、産業競争での優位保持のための技術流出規制には企業レベルでも熱心でありますが、国家安全保障上、あるいは軍事的優位維持のために、技術流出を規制するという考え方が弱いです。かつて、東芝によるロシアへのコンピュータ制御スクリュー研磨機械の輸出というココム違反事件がありましたが、これもそのことの反映でした。

 日本では企業、大学など広範囲にこういう問題への意識を醸成していくことが必要なように思われます。東芝の半導体事業売却もそのような視点を入れて考えられるべきでしょう。

  
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