2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月17日

 賈慶国北京大学国際関係学院長が、オーストラリア国立大学情報サイトEast Asia Forumに9月11日付で掲載された論説で、北朝鮮の危機は、核戦争、政治的混乱、大量の難民等様々な予測不可能な否定的な結果をもたらし得るが、中国はそれを望まないとする一方、朝鮮半島の状況が悪化していくのであれば、中国はその準備をする以外に選択肢はない、と言っています。要旨は以下の通りです。

(iStock.com/Roman Milert/EgudinKa/VladimirSorokin)

 北朝鮮による最近の一連のミサイル発射及び核実験は、北朝鮮が米国に届く核兵器を持つのも時間の問題だということを示した。米国による先制攻撃の可能性は高まったし、そこに至らなくとも、より厳しい制裁や、より大規模な軍事訓練がもっと頻繁に行なわれよう。北朝鮮において軍事衝突や危機発生の可能性が急速に高まり、中国にとり北朝鮮の核問題に取り組む緊急性が高まったということだ。

 中国は国連制裁実施の努力を強めている。北朝鮮の鍵となる収入源である石炭の輸入を停止した。中国の「二つの停止(北朝鮮が核とミサイルの実験を停止し、代わりに米国と韓国の合同軍事演習を停止)」提案に北朝鮮が希望を見出すことを望むが、北朝鮮はこの中国の努力をほぼ無視し、米国の軍事行動にはグアムへの核攻撃で応えると息巻いている。朝鮮半島における戦争の可能性は日に日に大きくなっている。

 戦争が現実的な可能性を持ち始めるのなら、中国は準備しなければならない。中国は緊急時の計画について関係国と話し合うことにもっと積極的でなければならない。中国の現状は、北朝鮮を不安にさせ、さらに遠ざけることを恐れて、この考えに反対である。だが現下の状況に鑑みれば米国及び韓国との話し合いを始める以外の選択肢はない。以下の問題が話し合われるべきである。

 第一に、誰が北朝鮮の核兵器を管理するかという問題がある。核拡散防止あるいは管理コストの観点から、米国がその任を担うことに中国は反対しないかもしれない。しかし、中国は米国が38度線を越えることに強い抵抗を感じている。全体を比較考量すれば、中国は自ら核兵器を管理することを望むだろう。

 第二に、予想される難民にどう対処するかという問題がある。中国は人民解放軍を送って、北朝鮮内に安全地帯を作り、難民が中国の東北部に流れ込むことを防ぐという案に同意するだろう。

 第三に、誰が北朝鮮の国内秩序を回復させるかという問題がある。韓国軍や国連平和維持軍かもしれないが、中国は米軍が38度線を超えて、この任務に就くことに反対するだろう。

 第四に、危機の後の政治的アレンジメントの問題がある。国際社会は新たな北朝鮮政府を樹立すべきなのか?それとも朝鮮半島の統一に向けた国連による朝鮮半島全体の国民投票を準備すべきなのだろうか?

 第五に、THAADの撤去の問題がある。中国は、THAADは中国の安全に脅威を与えており、その撤去を望んでいる。米国や韓国は繰り返しTHAADが北朝鮮の核とミサイルの開発への対応であることを言明しており、その脅威がなくなれば中国の提案を受け入れると想定して良いだろう。

 北朝鮮の危機は、核戦争、政治的混乱、大量の難民、それ以外の様々な予測不可能な否定的な結果をもたらし得る。中国はそれを望まない。しかし、朝鮮半島の状況が悪化していくのであれば、中国はその準備をする以外に選択肢はない。

出典:Jia Qingguo,‘Time to prepare for the worst in North Korea’ (East Asia Forum, September 11, 2017)
http://www.eastasiaforum.org/2017/09/11/time-to-prepare-for-the-worst-in-north-korea/


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