2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月9日

 ニューヨーク・タイムズ紙の著名なジャーナリスト、デイヴィッド・サンガーらが、9月3日付け同紙解説記事で、最近の北朝鮮の急ピッチの核開発を考えると、北朝鮮の核開発が基本的に防衛的であるとの想定が疑問視され始めている、と述べています。要旨は以下の通りです。

(iStock.com/stockdevil/Emilija Randjelovic/seamartini)

 金正恩が権力の座についてから6年、彼の動機ほど分からないものはない。

 常識的には、金正恩は、金日成、金正日と同じように、北朝鮮体制の維持が目的と考えられてきた。

 しかし、今やトランプ政権内の多くの者が、北朝鮮の核開発が米国に政権転覆を図らせないという、基本的に防衛的なものであるとの想定を、疑問視し始めている。

 金正日の真の目的は、(1)米本土を核攻撃できるようになった時、米国を脅かす(ブラックメイル)こと、(2)米国を日本、韓国から引き離すこと、(3)金正恩をトランプと習近平と同列の指導者とすること、のいずれか、あるいは全てかもしれない。

 これまで北朝鮮は、公には国際社会の完全な一員として受け入れられること、核計画を推進すると同時に経済発展を図ること、を望んでいると言ってきた。また、長期的には南北統一を達成すると述べてきた。

 北朝鮮はしばしば米国、韓国を脅しで挑発してきたが、米韓が北朝鮮を敵視する限りという条件付きであった。しかし、これらのいずれも、なぜ金正恩が過去1年、米本土を標的とする核兵器の開発を急いだかを説明できない。

 最もよく聞く説明は、北朝鮮がそのような核兵器を持てば、米国はカダフィにしたことを金正恩にはしないだろうと考えている、というものだった。カダフィは西側との経済統合の約束を得て2003年に核計画をやめたが、その後カダフィは米などに見放され、最後は反乱勢力に処刑された。

 しかし、金正恩は、生存戦略以上のことを考えている可能性がある。

 トランプの助言者や専門家の何人かは、金正恩が制裁の撤廃と在韓米軍の撤退を実現しようと考えているのではないかと思っている。北朝鮮が核を楯に、南北朝鮮の武力統一を図るのではないかと懸念されている。北朝鮮が米本土を攻撃する核能力を持てば、日本や韓国に対する米国の安全の保証が危うくなる恐れがあるとの指摘もある。

 これまで交渉担当者は、北朝鮮は米国との平和条約と引き換えに核計画を放棄するのではないかと考えてきた。

 しかし、今や、北朝鮮が制裁の結果、これほど力を入れてきた核戦力を放棄すると考えるのは、幻想と言っていい。

 金正恩は、暫定的措置として核戦力の凍結を考えるかもしれない。そうだとしたら過去数年の核開発のスピードが説明できる。凍結を交渉する前に、解体できない水準の核能力を達成してしまうということである。

出典:Motoko Rich & David E. Sanger,‘Motives of North Korea’s Leader Baffle Americans and Allies’(New York Times, September 3, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/09/03/world/asia/north-korea-kim-jong-un.html


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