2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月9日

 北朝鮮が最も重視しているのは、体制、あるいは北朝鮮という国家の維持、生存と考えられます。生存にとって最大の脅威である米国に対抗するため、核武装に努めてきたと見られます。

 北朝鮮が生存のため望んでいるのが米国との平和条約です。米国と平和条約を結べば、国際社会の正当な一員と認められます。米国からの軍事攻撃の危険は、全くなくなるわけではありませんが、著しく減ることになります。その米国との平和条約の交渉を不利に進めないために、米本土を攻撃できる核戦力が必要と考えているものと見られます。

 したがって、北朝鮮にとって核開発は至上命令であり、あらゆる手段を講じて進めると見るべきです。

 解説記事は、「北朝鮮が制裁の結果、これほど力を入れてきた核戦力を放棄すると考えるのは幻想と言っていい」と述べていますが、その通りでしょう。

 最近の核実験を受けた国連安保理による如何なる追加的制裁も、北朝鮮の核開発を止めることにはならないと考えられます。北朝鮮は、米本土を攻撃できる核能力を達成するまで、核開発を続けるでしょう。

 解説記事は、北朝鮮が米本土を攻撃できる核能力を開発した場合、米国を核で脅し、在韓米軍の撤退、米国と日韓との離反を図るのではないか、と指摘しています。また、武力による南北統一を図ろうとするかもしれない、と言っています。

 これらはいずれも、米国が北朝鮮の核の脅しに屈することを前提としています。しかし、この想定は北朝鮮の脅しを過大評価しています。米国の核を含む戦力は北朝鮮より圧倒的に大きく、北朝鮮の脅しに屈するいわれはありません。米国は毅然として北朝鮮の恫喝を聞き流せばいいのです。

 北朝鮮の最後の脅しは米本土を攻撃するということですが、これに対しては米国がレッドラインは米本土の攻撃であることを明らかにし、攻撃される場合には核による全面報復措置を取ることを明言すべきでしょう。韓国に対する全面攻撃もレッドラインとなります。

 いくら金正恩がリスクを取ると言っても、北朝鮮が崩壊するような結果を呼ぶ行動は自殺行為であり、米本土攻撃や韓国に対する全面攻撃はしないと思われます。

 米国、日本、国際社会は、事態に如何に対処すべきでしょうか。当面は制裁の強化を中心に、できるだけ外交的圧力を加える以外に方法はありません。そして、その間北朝鮮の脅しに惑わされないことです。しかし、上述の通り、北朝鮮は制裁の強化にも関わらず、核開発は急ピッチで進め続けるでしょう。その北朝鮮にどう対処するのか、いずれは角度を変えたアプローチが必要と思われます。

  
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