2024年12月27日(金)

こんな子 こんな時 こんな絵本

2010年10月7日

 本を読むこと、中でも絵本が好きな身にとって、「見えない」という状況を想像することは、とても辛いことです。文字は、点字や音訳テープという手段で対応できますが、絵はどうすれば……? 『しろくまちゃんのほっとけーき』という、ロングセラー絵本があります。見開きページで、フライパンの中のホットケーキがだんだん焼けていく様子にワクワクした思い出を持つ方も、多いことと思います。昨年夏、この絵本の姉妹編のような『てんじつき さわるえほん しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)が発行されました。

 そのタイトル通り、従来の絵の下に文字と点字をいれ、絵の部分は透明な樹脂インクで特殊な隆起印刷をほどこしているので、しろくまちゃんとこぐまちゃんの違いやホットケーキが焼けていく様子も、触ってわかるようになっています。見えない人も見える人も、同じ本を楽しめるようになっているわけです。私や娘にとってその表記は、文字や絵というより、感触のおもしろさを感じる凸凹に過ぎませんが、目が不自由な方にはどう感じられのだろうかとか、見えないというのはどんなかんじなのだろうかとか、考えるきかっけになるのは確かです。

言葉で伝えるのが難しいことこそ、
絵本が手助けになる

 『どんなかんじかなあ』(自由国民社)と、ひろくんは考えます。ともだちのまりちゃんは、目が見えない。しばらく目をつぶっていたらわかるかもね。さのくんは、耳がきこえない。しばらく耳をふさいでみよう。そして、たくさんのいろいろな音を聞き、気づかなかったかあさんのほくろの数がわかります。でも、おとうさんもおかあさんもいない、きみちゃんの感じは、一生懸命考えたけどわからなかった。だって、試すことができないから。そのきみちゃんがいいます。「一日じっと動かないでいてみたの。ひろくんってすごいね」。ひろくんは、車いすです。そして、今日もいろんなことを考えています。動けるって、どんなかんじかな、とか。

 世の中のあらゆることを考えるとき、「相手の立場になって」ということは、よく言われることですが、なかなかむずかしいことです。良くも悪くも、「私は…」と、自分を中心に考えることになりがちだからです。そして、私はわたしで、他の誰かになることはできません。結局、どれだけ察したり、考えたりして、理解する努力をするかということに尽きるのでしょう。そして、子どもたちに偏見のない受け止め方、接し方を伝えるのも、大事なことだと思います。

 自分や子どもたちが理解する手助けに、あるいは、自分では説明することが難しい問題への答えとして、役に立ってくれる絵本はたくさんあります。『さっちゃんのまほうのて』(偕成社)には、先天的に右手の指がないさっちゃんの悲しみと悔しさ、そして成長の様子が描かれます。また、『ペカンの木 のぼったよ』(福音館書店)は、赤ちゃんのときの病気がもとで、一人で立ったり、歩いたりができず、話をすることも難しい幼稚園児のりんちゃんが、ペカン(西洋くるみ)の木に登るお話です。りんちゃんが木に登れたのは、先生がおぶってくれたからですが、自分たちと違っても分け隔て無くりんちゃんに接する同級生たちの思いと応援があったからこその出来事でした。

 


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