2024年11月24日(日)

田部康喜のTV読本

2017年10月25日

 子どもが同じ幼稚園に通う相良貴子(青木さやか)が率いるグループから、理沙はいじめにあっているというのである。貴子は元女子プロレスラーである。「けんかの仕方を教えて。わたしは強くなりたいの」と、理沙はいう。

 「ひとつだけ条件がある。けんかはけっしてしないこと。その代わり、折れない強い心と、なにかあったときに逃げる強い足をつくってあげる」

 菜美は理沙とふたりでジョギングやシャドーボクシングなどの練習を始める。

ボスママの秘密、対決、和解
「自分が弱いことを認めて」

 いじめを主導していた貴子(青木)にも秘密があった。夫に離婚を迫られていたのである。ドラマの終盤で明らかになるが、理沙(小野)を標的にしたのは、幼稚園の保護者会の帰りに夫が「優しそうなひとだな」といい、夫婦げんかが発端だった。

 貴子はグループの主婦たちに、理沙に対するいじめを加速することを提案する。さすがに、仲間たちも躊躇し始める。「わたしは子どもに尊敬される母親になりたい」といって、去っていき、ついにひとりぼっちになる。貴子から離れた母親たちは、菜美と理沙のトレーニングに参加していく。

 事件が起きる。自転車に乗っていた理沙を貴子が手で押して、転倒させ、理沙は右腕を骨折した。

 理沙の家を訪れた菜美の胸にすがって、彼女は涙を流す。

 「ことを荒立てると、憎しみの連鎖を生むのでだまっています」と。

 「いま音が聞こえたよ。ポキッという音が。ときどきは心が折れてもいいんだよ」

 ――わたしには救わなければならないひとが、もうひとりいる。

 「お約束」のアクションは、元女子プロレスラーの貴子と菜美が、深夜の公園で対決する。菜美は貴子を組みしきながら、こういうのだった。

 「狭い場所でボスをきどっていたわたしは、信じるひとがいない荒野のようなところにいってしまった」

 菜美は子ども時代に、養護施設で過ごしボスとして君臨したのだった。

 「だったらわたしはどうしたらいいの?」と貴子は涙ながらに尋ねる。

 「自分が弱いことを認めて、肩の力を抜いて、みんなの力を借りれば荒野にいかなくてすむ」と答える菜美。

 貴子は理沙の家を訪れて、詫びを入れて、二人は友人になった。

 最後は、「お約束」のシーンへ。菜美の家。

 台所に立つ菜美の後ろに回った勇輝(西島)が、腰のあたりに手を置いて「やっぱりひきしまったなぁ。近所の噂で聞いたんだが、ボクシングのトレーナーをしていたんだって」。

 「ごめんなさい。だまっていて」

 「いやいいんだ。少しぐらい秘密があったほうが、君に新しい発見があっていいよ。ご飯は後にしないか?」

 「うん」

 菜美のナレーションで幕である。

 ――わたしの本当の秘密を発見してくれたら、もっと燃えるのだろうか?
 

  
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