ムガベ辞任当初の歓喜は急速に不安に変わっているようです。ムナンガグワ(75)は元々ムガベの取り巻きであり、ムガベと同根ではないかとの疑念も深く、その冷酷な政治スタイルにも不安があります。ムガベの終わりという第一段階は兎も角無血、平和裏に達成されました。これからが第二段階です。ムナンガグワが生まれ変わり、新たなジンバブエをつくることができるかどうか、今ジンバブエの内外に期待と不安があります。
24日のムナンガグワの大統領就任演説のトーンは総じて正しいものでした。ひとまず安心させられます。「新しい民主的なジンバブエ」を築いていく、世界の関係国には制裁を再考して欲しい、ジンバブエへの投資は安全である、世界の国々との関与を再開したい、ジンバブエは今までの政治社会の文化(カルチャー)を変えねばならない等と述べるとともに、土地政策や海外からの投資促進など具体的課題にも言及しました。他方ムガベについては自分の「父」、「恩師」だと言及し讃えました。就任式には野党のチャンギライやムジュル元副大統領等も出席し、国外からは元ザンビア大統領のカウンダ、ボツワナ大統領のカーマ等が出席しました。
次期選挙を予定通り来年7月末までに、且つ公正に実施することが最重要です。前回の大統領選挙と議会選挙は2013年7月31日に行われました。いずれも任期5年で、ムナンガグワの任期も2018年7月末に満了します。与党が議会での多数でムナンガグワの任期延長を強行することがあってはなりません。なお、ジンバブエは、結局、民主化は進まず、経済開放は進むという中国モデルになるのではないかとの見方も出ています。
国際社会の対応も問題となります。改革の実施を条件に適切な支援が必要でしょう。本来ならば英国や米国が取りまとめをやるべきですが、英国は今そのような外交的余裕はありません。残念ながらトランプは、オバマと違って、アフリカには関心は持っていないでしょう。当面SADCや国連等がその役割を果たすべきではないでしょうか。日本も関係国と協力して支援を考えておくべきです。
もうひとつ心配なことがあります。ムガベに対しては訴追免除を含め「最大限の安全」が確約されたといいます。更に、報道によれば、年間15万ドルの現行給料の終身支払いの他に、1000万ドルの一時金を支払うことが合意されたといいます。一時金支払いが事実であれば問題です。
ジンバブエはグローバルな問題ではありませんが、アフリカの主要問題であり、国際社会全体とも関係します。ムガベの辞任は長期政権が続く赤道ギニア、カメルーン、ウガンダ、エリトリアにも影響を与えるとの指摘があります。
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