報告書には、「日本と領有権紛争が生じた際には、編隊級(2〜4機)以上の戦闘機を出撃させて、敵の攻撃編隊群の形成を妨害する任務を遂行する。この任務を遂行するためには、空母に30機以上の艦載戦闘機を搭載しなければならない」と、対日戦を想定した任務と要望性能が記載されている。
日本との領有権紛争とは、竹島を巡る争いを指す。竹島は現在、韓国が不法占拠しており、「独島警備隊」という対空砲まで装備した武装警察が警備し、韓国軍は年に2回、陸海空軍海兵隊と海洋警察まで動員する大規模な「独島防衛訓練」まで行っている。
日本が、中国の海洋進出と北朝鮮の核・ミサイルに対処しなければならない情勢の中で、準同盟国と位置付けられる韓国に紛争を仕掛けると本気で考えているのだろうか。もし、そうであれば、現状認識が根本的に間違っているといわざるを得ない。
日米英との比肩を目論む韓国海軍の狙い
報告書に記載された空母保有の必要性は、対日戦だけではない。第一の理由として、朝鮮半島有事に際して、黄海と日本海に進出し、北朝鮮の指導部や主要施設を攻撃する「戦略的麻痺戦」の実行を挙げ、次に、朝鮮半島有事に中国軍が介入してきた場合の航空阻止作戦を挙げている。
そして、これら任務を遂行するためには、イギリス海軍が2017年2月から実戦配備した空母「クイーン・エリザベス」を目標とする空母を建造・保有する必要があると説いている。日米英が保有する最新の“空母”と韓国が導入を検討する空母のモデルを比較したものが下表だ。
韓国海軍が、日米英という第2次世界大戦当時からの海軍大国を凌駕する、あるいは一挙に肩を並べる空母の保有を検討していることが分かるだろう。だが、果たして皮算用通りに事が運ぶのだろうか。
韓国の空母導入計画が明るみ出たのは、今回で3回目。最初は1996年に竹島を巡り日本との対立が深刻化すると、金泳三大統領が計画を承認した。次は2013年に軍人最高位の合同参謀本部議長が、空母保有の検討計画を発表したが、いずれも予算面の問題で頓挫している。
だが筆者は、仮に予算の問題をクリアして建造にたどり着いていたとしても、韓国海軍が空母を作戦配備することはできないのではないかと考える。