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2017年12月30日

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石井孝明 (いしい・たかあき)

経済・環境ジャーナリスト

慶大経卒。時事通信記者、経済誌フィナンシャル・ジャパン副編集長を経て現在、フリーで執筆活動を続ける。アゴラ研究所の運営するエネルギー情報サイト「GERP」の編集も担う。

 一連の福島原発の事故対策では、最新技術が活用されている。経産省は13年に技術研究組合国際廃炉研究開発機構(IRID)を官民共同でつくり、日本と世界各国から福島の廃炉に役立つ技術を集め、開発を支援している。

 3号機では他の原子炉と違って、炉に注入した水の漏れが少なく、下部に水がたまっていた。そこで、IRIDが協力して開発されたロボットが活躍した。愛称は「ミニマンボウ」。外見はユーモラスだが、水中で小回りがきき、映像を送れる。炉の状況把握に役だった。

探査ロボット、ミニマンボウ (東芝提供)

 福島第一原発では、12年頃からは「水との戦い」が問題になっていた。原子炉を水で冷やすることにより発生する汚染水、建屋周辺に流れ込む地下水への対応だ。それらの対策も進んでいた。

 冷却用の水は循環させ、汚染された場合には特殊な装置で放射性物質を取り除く仕組みが13年に完成した。人体に影響を与えかねない放射性物質に汚染された水は外部に出ない状況だ。その処理水は現在100万トン以上になっておりタンクに溜めている。人体に悪影響を与えないトリチウムという放射性物質は取りのぞけない。海に放出する解決策が考えられるが、現在、安全面のみならず社会的影響も含め国・東電・地元で慎重に検討が進められている。タンクは今830基ほど作られて構内を埋め尽くしている。いずれ敷地を埋め尽くしてしまい、タンクの建設コストも膨らむ一方だ。問題の早急な解決が必要だ。

 地下水に関しては、井戸でくみ上げ、水を海に流す水路をつくるなどして、原子炉の建屋周囲に流れ込む水を減らした。また雨水が地下に染みこみ地下水が増えないように、また土中の汚染物質が広がらないように、構内の大半はフェイシングという形でモルタルに覆われていた。地下水の一部が破損した原子炉の下部で、溶解した燃料と接して、水を汚染する可能性がある。水の流入を止めることで、汚染した地下水が外部に流れ出る可能性は減る。

 建屋内への地下水流入量を抑制する凍土壁の凍結が順調に進んでいる。地中30mの深さまで打ち込んだ凍結管から特殊溶液を出し、土に含まれる水を凍らせる工法だ。建屋周囲の地中に全長約1.5kmの氷の壁ができ水の流入を遮断している。訪問時点では、3つの炉の全周の凍結が始まり、表土を見るとカチカチに凍っていた。東電は18年初頭にかけて、効果を検証していくという。これはゼネコンなどがトンネル工事などに使う新しい技術だ。

凍土壁の現状、地表(白いところ)まで凍り付いている。

 これらの重層的な対策により建屋内には、かつて1日400トンの地下水が流れ込んだが、今は同130トン程度に減っている。また海側に800メートルの遮水壁をつくった。こうした一連の対策で、事故現場から出る水で海や外部環境を汚染するリスクは大幅に減った。

 新しい課題は廃棄物だ。工事で出た廃棄物は全部構内に溜め込んでいる。その焼却と保存設備を、構内に建設中だ。ロボット、土木などの日本の産業界の持つ技術の強みが、廃炉作業に生きている。

最新技術、廃炉ビジネスへの期待

 IRIDは世界にトリチウム除去技術を公募しており、ロシアのロスアトムから、その技術の提案を受けている。これは一例だが、福島第一の廃炉作業は、世界から技術を集め、さらに原子力関係者の注目を集めている。国際エネルギー機関(IEA)によれば、この先25年間で、世界全体にある約200基の原子炉が閉鎖される予定だ。その大半は欧米に集中している。福島で得られた知見は、廃炉ビジネスに結びついていくかもしれない。

 廃炉をめぐる巨大な工事は、国の試算によれば総額8兆円程度かかるとされている。東電と政府の決めたロードマップによれば、50年ごろをめどに作業を終える目標だ。事故炉から核物質を取り出すことを最終目標にすることを国と東電は目標にしている。しかし現状は、事故を起こした原子炉の状況把握も難しい。安全に作業をするための一段の技術開発がない限り、その道のりは大変遠いと認識した。

 しかし一歩一歩進んでいる面もある。そして事故を起こした責任に向き合い、その処理を続ける東電の人々、さらに協力企業の人々の努力がある。この事実は、なかなか社会に広がっていない。

 現実をしっかり受け止め、働く人に敬意を持ちながら、日本全体で福島第一原発の廃炉に関心を向け、協力をしていかなければならないだろう。

 速やかな廃炉は、福島の完全な復興につながる。

  
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