南アフリカで汚職が蔓延している理由
体制が大きく転換し、それまでの既得権益層から利権をはく奪し、国民各層にその利益を均霑しようという時、南アフリカに限らずどこでも、大なり小なり汚職が横行する。日本でも、明治維新に際し、武士階級を廃し産業基盤たる財閥を育成した時、それなりのことはあったろうし、社会主義圏で体制転換の時、多くのオリガルキーが生まれたことは周知のことである。
南アフリカでもアパルトヘイトが廃止され、新生南アフリカとして再出発した時、似たような状況が生まれた。というのも、南アフリカには白人が築いた一大産業構造があったからである。通常、アフリカ諸国は、こういう白人層の富裕資産を新政府が接収する。それが脱植民地化なのである。しかし、南アフリカはそれをせず、白人資産はそのままとし、白人と黒人が共生する道を選んだ。マンデラ大統領が目指したレインボー・ネーションである。
しかし、片や、食うや食わずの黒人層がひしめき、他方で裕福に生活する白人層がいる。これでは社会は成り立たない。そこで南アフリカ政府がしたのが、黒人優遇政策いわゆるアファーマティブ・アクションである。民間企業は、黒人を一定割合、幹部に登用しなければならず、また、一定割合の株を提供しなければならない等である。これにより実質的に白人資産を黒人に移転した。
ところが、どこでも、こういう時の資産移転を公平に行うことは難しい。結局、南アフリカに出現したのは、巨大な資産を抱える新たな黒人成金層だった。そして、この成金が生まれる過程で数々の汚職が蔓延したのである。