新大統領に就任したラマポーザとは何者か?
ズマ氏もそういう中で政治家として活躍した。数々の暗い噂がズマ氏にまとわりついた。しかし、何もこれはズマ氏に限ったことではない。新たに大統領に就任したラマポーザだって、完全に潔白というわけではない。何と言ってもラマポーザは大きな成功を収めた企業家なのである。
じつは、ラマポーザはもともとANCの闘士だった。マンデラと共にアパルトヘイト廃絶を求め凄惨な戦いを続けた。時の白人政権との間で、数々の難しい交渉を切り盛りし、とうとう平和裏にアパルトヘイト廃絶を実現した。その政治力、交渉力は折り紙つきである。実は、マンデラ大統領の意中の人物がラマポーザだった。マンデラはラマポーザに大統領の座を譲ることで新生南アフリカの将来を託すつもりだった。当時の複雑な政治状況の下で、しかし、このマンデラの考えは陽の目を見ることなく、政権はターボ・ムベキの手に移り、ラマポーザは実業界に去っていく。
持ち前の手腕を発揮したラマポーザは、自ら設立したシャンドゥカ・グループを通じ、資源、エネルギー、不動産、金融、通信等、ありとあらゆる分野への投資を開始、やがて巨万の富を築き上げていく。しかし、ラマポーザは実業界に満足しなかった。やはり自分の生きる場は政治しかないと悟ったかつてのANC闘士は、再び政治の世界に戻っていく。2014年、ラマポーザは副大統領に就任し、先の議長選挙で見事議長の座を手中にした。しかし、その時、南アフリカは9年間のズマ大統領の治政の下、先に述べたとおり、既にニッチもサッチも行かない状態になっていたのである。
ズマ大統領が他と違うのは、度を越した汚職というより、汚職を公然と行ってはばからないところ、というべきかもしれない。そのあまりの傍若無人ぶりに、とうとう民心がズマ氏から離れた。所属するANCは無論、労働組合、南アフリカ有力政党の共産党、市民団体、教会、はては実業界に至るまでズマ大統領を見放した。こと、ここに至ってはズマ大統領としてもどうしようもない。とうとう引導を渡される羽目になった。