2024年7月13日(土)

Wedge REPORT

2011年1月29日

コメ農家が生き残るためには

 現在、外国産に高関税がかかっているコメは、畜産同様、TPPによって大打撃を受ける可能性が最も大きい作物の1つと言われている。「しかも、野菜や果実、豚肉などと比較すると、味の差が出にくいと思います。『うちのおコメはおいしいです』と言うだけではあまり有効なアピールにはなりません」という菊地さん。では、販路を開拓していく上で何を売りにしたのか。

 「最も力を入れているのは作り方における工夫です。私のコメは、秋田県の『特別栽培米』に指定されていますし、特別栽培米に認定されるための農薬や化学肥料の量から、さらに減らす努力をしています」と、菊地さんが考えるブランド力強化のカギは農法にあることを教えてくれた。安心・安全なコメを届けることこそ、TPPで増える外国産のコメを避ける消費者層に強く訴えられるだろう。農薬を減らすために勉強し続けることを、菊地さんは「農家として当たり前のこと」と謙遜するが、業者及び大学と連携して一緒に農法の研究を進めたりと、自らの技術を高めるための精力的な活動には頭が下がる。

 菊地さんはあくまでも前向きだ。「まだ具体的な話は出来ていませんが、先日、日本でトップクラスの卸会社の社長さんが私を訪ねて来て、『TPPに備えて、農家と卸が共に手を組んで、生き残っていくための新しいビジネスモデルを模索しましょう』と提案してくれました」と教えてくれた。例えば、共同出資で農業生産法人を設立し、そこで加工品を作って販売することなどが考えられるという。「企業も『うちの会社が作った商品です』と売り込むより、『○○さんの農家のコメを原料に作った商品です』とアピールする方が、消費者にも訴求しやすい。互いのもつノウハウを活かして、新たなビジネスに挑戦していきたい」。「小規模農家には小さいなりのやり方がある。規模に見合った販売先をいかに自分で開拓できるかが重要なのです」と、菊地さん。具体的にはどんな方法があるのだろうか。

「出る杭にはしがみつけ」

 「農家の高齢化が問題視される一方で、やる気のある若い農業経営者たちもたくさん出てきています。そういった、すでに頑張っている人たちと連携したり、やり方をまねしたりすることで成功のヒントが得られるはずです。私のモットーは『出る杭にはしがみついていけ』。ぜひ前向きな農家にはそうやって頑張って欲しい」。(菊地さん)

 菊地さんは自身の経験から、販路や販売先の開拓には異業種交流が有効と勧める。また、日本青年会議所の米穀部会の会員でもあり、その集まりでの雑談から取引きが始まり、いまだに付き合いが続いているところが何件もあるという。また、趣味の料理を活かして、料理好きな男性たちを集めて料理講習会を開き、そこで自身の作ったコメを食べてもらうという取り組みも行ってきた。横のつながりをいかに広げてくかということが重要となる。

 TPP参加による打撃が大きいとされる畜産とコメ。宮治さんも菊地さんも、楽観視しているわけではない。「市場に流している豚肉は打撃を受け、価格下落は避けられない」(宮治さん)、「ただでさえコメの価格は下落し続けているので、外国産が入ってくればより厳しい状況になることは間違いない」(菊地さん)と、当然危機感はあるものの、それぞれ多様な販路をもち、農家の規模に合った販売先と信頼関係を築き、自身の作物のブランド力を高めていくことが生き残っていくための強みになると考えているのだが、また違った角度からリスクヘッジのアプローチをしている農家もいる。

『物語』を届け続けるイチゴ農家

 愛知県一宮市。名古屋駅から2回電車を乗り換えると、名鉄尾西線・観音寺駅がある。この駅から150メートルほど歩いたところに見えるのが、加藤秀明さん(30歳)の自宅とイチゴのハウス施設だ。


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