2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2011年1月29日

農産物の輸出は国が音頭をとるべき

 さらに、加藤さんは、過去にイチゴを香港に輸出することに挑戦していた。しかし、国を挙げて売り込む韓国と闘えず、撤退してしまったという。「韓国は、仁川空港の隣に野菜や果実の大きな農場を設けて、大量に輸出することで価格を安く抑えています。私のイチゴは韓国のものの2倍の価格となり、Made in Japanブランドがいくら人気と言っても、太刀打ちできませんでした」(加藤さん)。

 加藤さんだけでなく、宮治さん、菊地さんも、「国は日本の農産物をもっと輸出できるようにするなど、全体的なマネジメントに尽力してほしい」と口を揃える。加藤さんによると、香港のデパートでは、日本の各地の行政や農協がそれぞれバラバラとやって来ては自分たちの農作物を売っていく姿があったそうだ。「『日本の農産物を買いたくても、今の状況ではいつ何が買えるのか分からない。それに比べて韓国は販売場所も統一され、年間での販売予定も告知してくれるので分かりやすい』と香港の消費者は言っている」(加藤さん)と、すでに日本が売り負けている様子が分かる。

 日本がTPPに参加すれば、国内農業に影響が出ることは避けられない。しかし、すでに農家の中には考え、工夫し、取り組んでいる人たちがいる。彼らはTPPに負けない経営に励んでいるが、その先にある「日本の農業を元気にする」という目標に向かって頑張っている。規模や技術などを見ても、彼らは決して最初から特別な農家だったわけではない。しかし、よいものを作ることはもちろん、出荷から消費者の元に届くまで様々な工夫を施し、自社の農産物の付加価値を高めてきた。こうした農家が増えれば、TPPだって過度に恐れる必要はない。菊地さんはこう言った。

 「TPPは農業が変わる最後のチャンスだと思っています」。

 最後のチャンスを、ムダにしてはならない。
 

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