当地のAIスタートアップ各社はグローバル人材の採用に余念がない。「Tupl」は通信事業者向けに通信混雑を緩和するプラットフォームを構築し、Tモバイルもその技術を採用している40人弱のスタートアップ。CEOのペトリ曰く社員全員が違う国籍を持っているので、シアトルで拠点とするWeWorkを世界中で使ってネットワーク化したいと話している。インテリジェント・データのDefinedCrowdはポルトガルに、NewNormalはウクライナに開発拠点を持っており、これらの謂わば多国籍スタートアップでは「コア組織がシアトルで開発は米国外」の起業シナリオが当たり前になりつつある。
留学生と企業のマッチング
それらスタートアップへのグローバル人材供給の為に、Innovation Internship for International Studentというイベントが始まった。これはシアトルにいる留学生のインターンと各社とをマッチメイクするイベントで、次回は3月21日にNortheastern Universityのシアトルキャンパスで開催し、日本やアジアからの留学生など100名以上の学生が集まる見込み。昨年11月に行ったパイロットイベントに参加した30名の学生は総じて非常にレベルが高い。
多くは本国でエンジニアやプログラマー、また有名大学からの交換留学生もいる。中にはマシンビジョンやMLのエキスパートもいるなど、即戦力人材が多くみられた。留学生のインターンは大学から許可を得て報酬を得る場合と、カリキュラムに無給就労体験が組み込まれている場合の2パターンがあり、報酬を支払う場合の相場は現在35ドルと言われ、これも高騰している。
マイクロソフト、アマゾンはそれぞれ時価総額が7000億ドルを超え、ワシントン州での今後5年間のインフラ投資合計額も1000億ドルを超えている。さらに増え続けるスタートアップと流入するシリコンバレー大手や中国勢。同州の経済は好景気と成長を継続するだろう。インズリー知事は昨年、Maritime Blue海運イノベーション構想をアナウンスし、海運もAI化と再生エネルギー化を推進中だ。
また同州は日本国と通商協定を結んでおり、AIもその重要な一項目となっていまる。日本企業にとってはシアトルのAIイノベーションの導入のみならず、これらインフラ事業への参画など多くの事業機会がある。低成長に直面する多くの日本企業にはぜひこの機会を活用してほしい。
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