2024年11月25日(月)

WEDGE REPORT

2018年3月23日

キリマンジェロの雪

 トランプ氏はこのところ、ロシアゲートの捜査に終わりが見えないことに苛立ちを深め、捜査を指揮するモラー特別検察官を名指しで非難、ホワイトハウスの法律顧問団に強硬派弁護士を入れるなどモラー氏との対決姿勢を鮮明にした。だが、トランプ氏はロシアゲートに加え、2つの難問に直面している。

 1つは昨年来、国政レベルの選挙で共和党が敗北続きなことだ。とりわけ、3月18日の東部ペンシルベニア州の下院補欠選挙は同氏にとってショックだった。当地は「トランプ王国」といわれるほどの大統領の牙城。ところが、現地に乗り込んで共和党候補を応援したにもかかわらず、民主党の若手に僅差で敗れてしまったのだ。

 敗北の要因の1つがロシアゲートであることは間違いあるまい。CNNの最新調査によると、捜査の推進に賛同する国民が61%に上り、反対の2倍近くに上った。共和党支持者の間では71%が反対だが、無党派がロシアゲートに反発し、ペンシルベニアの結果につながったと見られている。

 共和党はこのほか、昨年11月の南部バージニア、東部ニュージャージー州の知事選挙で敗北、同12月の保守王国南部アラバマ州の上院議員選挙でも民主党に敗れた。こうした状況から、共和党内部には、トランプ氏がロシアゲートの捜査に圧力を掛ければ掛けるほど、政治的に不利になるとの見方が強まっており、中間選挙への危機感が一段と高まっている。

 トランプ氏のもう1つの頭痛のタネはポルノ女優ストーミー・ダニエルズさんとの不倫問題だ。ダニエルズさんは2006年から2007年にトランプ氏と不倫関係にあったとされ、同氏の弁護士が大統領選の直前に口止め料として13万ドル(約1400万円)を支払った。

 しかし、ダニエルズさんは口止めを約束した文書にトランプ氏の署名がないとして、無効を求める裁判を起こしたほか、やり取りの写真を公表して口止め料の返還を申し出るなど騒ぎ立てている。同女の知人の話としてワシントン・ポストが伝えるところによると、トランプ氏はダニエルズさんに経済誌フォーブスで自分の尻をピシャリとたたくよう求めたこともあった、という。

 トランプ氏と不倫関係にあったと主張するもう1人、モデルのカレン・マクドゥーガルさんもつい3日前、不倫口止め料の無効裁判を起こした。マクドゥーガルさんは男性誌「プレイボーイ」のグラビアで有名なプレイメイトとして知られている。トランプ氏側から口止め料をもらった女性は全部で7人いるといわれており、訴訟が相次ぐ恐れもある。

 米コラムニストの1人はワシントン・ポストへの寄稿で、ダニエルズさんの不倫問題にアーネスト・ヘミングウエイの「キリマンジェロの雪」を引用。トランプ氏を足の壊疽で死ぬ小説の主人公に、ダニエルズさんを壊疽の元になった“小さな傷”に擬え、トランプ氏がモラー特別検察官の捜査ではなく、不倫問題で政治生命を絶たれるかもしれない、と指摘した。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る