世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年4月6日

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 インドのモディ首相は、2017年6月、フランスのエマニュエル・マクロン氏が大統領に就任して間もない時期にパリを訪問して仏印首脳会談を行っている。

 今回は、マクロン大統領がインドに到着すると空港で出迎え、その場で抱き合い、その写真は両国で大きく報道された。二人は、「馬が合う」と言われる。

 前回のパリでの仏印首脳会談でも意気投合した議題の一つが、地球温暖化対策のパリ協定を前進させようということだった。今回、インドとフランスは、国際ソーラー(太陽光)サミットを共催した。

 インドとフランスには、共通利益は多々あるが、対立する大きな問題は今の所ない。それ故、両国首脳が「馬を合わせる」ことは比較的たやすいことなのだろう。その事を示すように、上記で紹介した仏印共同声明を読んでも分かるように、仏印の戦略的パートナーシップは、マクロンが大統領に就任する前から、既に様々な分野で発展してきた。

 具体的には、防衛分野、テロ対策、原子力協力等である。

 防衛分野では、毎年のように、仏印合同軍事演習が行われている。特に近年では、海洋分野での協力が進んでいるようである。共同声明には、「インド洋」という言葉が明記されているが、マクロン大統領は、「インド洋」や「太平洋」で協力すると語っている。かつてインドにとっての敵は、インド・パキスタン紛争というように、国境を接するパキスタンとの対立が鮮明だったが、最近では中国の台頭により、中国を意識することが多くなった。今回の仏印防衛協力に関しても、中国を牽制したものだとも言われている。

 日本にとっては、仏印防衛協力が進むことは歓迎すべきことである。安倍総理が掲げ、トランプ政権でも言われているインド太平洋地域における日米豪印4か国の協力のインドは重要なパートナーである。また、日仏防衛協力は、日仏「2+2」(外務・防衛閣僚会議)等を通じ、確実に深化している。今年は、フランスのフリゲート艦「ヴァンドゥミエール」が晴海に寄港し、その後、海上自衛隊の「ゆうぎり」と合同訓練を行なっている。

 上記の仏印共同声明では、防衛協力の一環として、装備品(武器及び民生技術の汎用品)に関する協力も謳われている。従来は、インドはフランスから装備品を購入する一方だったが、現在では、モディ首相の経済政策もあり、共同開発や共同生産も行うようになっている。日本も、今後は、日米はもとより、多国間での共同開発、共同生産にも参加して行く時代を迎えることになるだろう。

 原子力分野での仏印協力も発展が見込まれている。地球温暖化対策としては、原子力は火力より「クリーンなエネルギー」とも言われる。インドとフランスは共に核兵器保有国でもあるが、原子力の平和利用にはより積極的である。欧州でも、福島での原子力発電所の事故以来、原子力発電を減らそうとの動きはあるが、マクロン大統領は、かつて「原子力はフランスの未来である。」と発言したこともある。原子力分野でも、中国が世界で伸長している現在、仏印が協力し合うのは、悪いことではないだろう。日本も、今まで培ってきた原子力の平和利用に関する技術や安全規制等に関して、その経験や人材を国際社会の中で生かすことを、より積極的に考えても良いかもしれない。

 今回の仏印共同声明の冒頭では、仏印両国がその関係を、民主主義の価値、法の支配、人権尊重等を基礎に発展させると明記されている。そして本年2018年11月11日にパリで開催される第一次世界大戦の終結100周年記念式典にインドも参加したいと述べられている。この点、価値を共有し、第一次世界大戦を戦った日本も加わることになるのだろう。特に今年は日仏国交樹立160周年でもある。日仏印(米豪)の関係強化が期待できよう。

  
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