2023年1月31日(火)

赤坂英一の野球丸

2018年4月4日

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「埋もれた名試合」

 最後に、選抜における私個人の「埋もれた名試合」も紹介しておきたい。昨年の第89回大会の市立呉(広島)−履正社(大阪)である。選抜初出場の呉は初戦で強豪・至学館と対戦し、大方の予想を覆して延長十二回の末に6−5で競り勝った。が、次なる相手が優勝候補の履正社ときては、2度も続けて番狂わせを起こすのは難しい。当時、中村信彦監督は試合前の心境をこう語っている。

 「うわあ、しもうたあ、こんなことになるんなら、初戦で勝たんかったらよかったあ、と思いましたよ。だって、敵うわけがないじゃないですか。ウチとは戦力が違いますもん。(打者では)身体が開くのがひとりもおらんし、ウチとは比較になりません。当日の朝は、恐怖で3時ごろに目が覚めました。選手たちには、負けるにしても10点差以内には抑えようやと、そう言いました。それぐらいのことしか言えんじゃないですか」

 しかし、そうした中村監督のやけっぱちなセリフが、負けてもともと、思い切っていこうと、かえって呉ナインを発奮させたのだろう。結果こそ中村監督の予想通り負けたものの、0−1の惜敗と大善戦。4番・安田尚憲(現ロッテ)をはじめ、ズラリと強打者が並んだ履正社打線を、〝格下〟エース・池田吏輝が黙々と抑え続ける姿に、地元広島だけでなく、多くの高校野球ファンが勇気づけられたはずだ。機会があったら、また甲子園で「粘りのイチクレ」(地元広島ではこう呼ばれている)を見たい。

  
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